自閉症の人と交流する時の注意点   
Interacting with Autistic People

■簡単な言葉で、ゆっくり、はっきり伝える

Image:by awsheffield CC BY-SA 2.1 JP
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自閉症の人たちは、外からの情報を受け取ることが苦手です。挨拶しても返答がないこともあるかもしれませんが、ワザと無視しているわけではありません。どう答えていいのかわからないで混乱している場合もあります。相手の言っていることが分からない時は「オウム返し」がよく見られます。相手が言った言葉をただ繰り返すのです。それでも、根気強く、声をかけてあげてください。「このくらい、わかるでしょ!」という思いは通じません。こいういときはABのどっちかいい?などのように具体的に聞きましょう。

  

【例1】ゴミを散らかしたとき

  (×)「散らかしちゃダメよ。汚れるから。ゴミを拾い

             ましょうね。教室が汚れるとみんなが困るでしょ

             う。だから、ゴミを拾わなければダメですよ」

  

   (○)「ゴミを、拾ってください」  

  

      ! 注意!だらだら文章が長すぎます。沢山の説明や優しい言い回しは、場合によっては子ど

      もを混させてしまいます。「みんなが困る」というのは、みんなとは誰なのかが明確で

      はない、困るというのは具体的にどんな様子であるのかわかりにくいです。

  

 

【例2】おもちゃで遊んだ後

 (×)「遊んだ後は、おもちゃをちゃんと片付けないとダメですよ。」

  

   (○)「○○さん、おもちゃを片付けます。」

 

【例3】食べる時

 (×)「おやつを食べる時は、きちんと座らないとダメですよ。」

  

   (○)「○○さん、座ります。 

 

     ! 注意!「ちゃんと」や「きちんと」という言い回しは、具体的にどのような状態を指すの

     かわかりにくいので、理解しにくい言葉です。では、どうすればよいのかというと、「ちゃ

     んと」や「きちんと」の内容をより具体的に教えればよいのです。「きちんと座る」は、 

     足の位置、手の位置を視覚的にわかるように示します。床や机にテープを貼って明示すか、

   「きちんと座っている状態」の写真を見せて説明してもよいでしょう。

 

 

【例4】待ってもらいたい時

   (×)「ちょっと待ってね。」

  

   (○)「○○まで待ってね。」

 

    ! 注意!生活の見通しが立っていること、つまり、「いつ」「どこで」「何を」「いつまで

    するのか」さらに、「その次に何をするのか」ということがわかっていると、それだけでと

    ても安定して過ごせます。本人が、そのときにしたくないことをさせようとするときや、逆

    にしたいことを我慢させるときは、そのこと(我慢する時間)に終わりがあることをきちん

    と伝えないと、好まない状態が永遠に続くと思って、大きな混乱やパニックを引き起こして

    しまうことがあります。その際、「ちょっと待って」とか「もう少し・・・」という抽象的な表現を

    用いるよりも、時計を理解できる場合は「〇時〇分まで・・・」とか、数唱して「10までだよ」と

    伝えたり、音の出るタイマーを利用するなどの具体的な時間の示しかたが理解しやすいよう

    です。

  

 

 

■視覚効果を使う

言葉によるコミュニケーションが困難なので、指示やスケジュールを伝えるときに、指さしや身振り、写真、絵カード、言葉カードなどの目に見える情報を用いる(視覚化)と効果的です。本人の能力や特性を十分理解した上で、本人が理解できる方法を用いることに留意すべきです。

 

 

 

■否定を肯定に言い換える

やってはいけないことを「ダメ」と否定するのではなく、やるべきことを具体的に示して、それができたら思いっきりほめます。

 

【例1】ドアを開けっ放しにして部屋に入ってきたとき

  「ドアを開けっ放しにしない」(×) ⇒「ドアを閉めます」(○)

 

【例2】制作の場で粘土を投げたとき

  「粘土をなげない」(×) ⇒「粘土は机に置きます」(○)

 

【例3】トイレに行ってパンツをおろしたまま出てきたとき

  「恥ずかしいからやめなさい」(×) ⇒「パンツを上げます」(○)

 

 

 

■話かけてきたら逃げないで

黙って聞いてあげてください。外国人に片言の日本語で尋ねられた時、また小さい子どもに道を聞かれた時に接するように、丁寧に聞いてあげてください。決して逃げないでください。

 

 

 

■してはいけないことをしてしまったときは、その場で注意

やってはいけないことについては、その場で即座に指導しないとほとんど効果はありません。「あの時、あそこで、あんなことをしたでしょう。あれはいけません。」と言われても、時間と空間における自らの位置付けが困難なせいもあって、自分のどこがいけなくて怒られているのかがわからないようです。指導すべきことが起こったときは、その場ですぐに何がいけなかったのかを伝え、そのときに怒っている表情を見せたり、いけないことを示す合図マークなど)を使って視覚に訴えると効果的です。逆に、過度の声かけや言葉で言い聞かせるだけの指導では、本人がいけないことを理解するのは難しいようです。また、しつこく怒ったりすると過度の嫌悪感が生じてパニックを起こしたり、逆に怒られることや周囲の過剰な反応に期待して、面白がっていけないことを繰り返すこともあるようです。

  

 

 

■集団行動

集団行動が苦手で、社会のルールに従うという認識があまりないかもしれません。公園のぶらんこや滑り台で、どんなに他のこどもが並んでいても、かまわずに押しのけて遊んでしまうかもしれません。順番というのがどういうことなのか、わかっていないのです。教えてあげようとしても、なかなかすぐには難しいと思います。怒鳴ったり、無理にやめさせたりしようとすると、パニックになって、騒ぎ出すかもしれません。根気がいる作業ですが、教える努力をしてあげてください。

 

 

 

■こだわり

自閉症児はこだわりがあるために、一度身についた生活習慣はなかなか切り替えるのが困難となります。そのため、本人ができることに対して過度な介助が行なわれると「これはしてもらうこと」というパターンができてしまい、本来なら自分でできることでも自分でやろうとしなくなることがあります。そのため、保護者や周辺の療育者と連携をとって、本人の能力、身辺自立の程度を的確に把握しておく必要があります。

 

急な変化はもっとも苦手とするところです。いつもの日課と違うことに気づくと、不安になるからです。できるだけ避けられればいいのですが、予定の変更がある場合は、前もって、紙に書くなどして丁寧に教えてください。

 

 

■自傷・他傷行為

自分の思うようにならない時に、ストレスがたまって起こります。他者に対して、「そうじゃない」とか「私は困っている」というメッセージが込められています。壁に頭をぶつけたり、髪の毛を抜いたり、手を噛んだり、人を攻撃したりします。このような場面に遭遇した時には、まず不機嫌の原因、「何に困っているのか」を特定すること。それを排除するように心がけてみること。治すのには、時間がかかります。学校や医師などの関係機関との相談が必要です。

 

 

■自閉症児者を見かけたら・・・

こんな感じの人を見かけたら、自閉症児/者の迷子かもしれません。声をかけて、交番に連れて行ってください。

・いかにも自分の意志でなく、そこに連れて来られたような感じで一人でいる

・しばらく同じ場所でふらふらしている

・電車の中で、一人で歩き回っている

・寒い中、裸足でいる

・服の着方が異様

・奇妙な手つきを繰り返している

・訳のわからない独り言を繰り返している

・奇声をあげている

 
 

【関連/引用/参考サイト】

「自閉症児との接し方」ウイング博士

接し方次第でこんなに変わる!「自閉症」の人の正しい対処法とは?-健康生活