特殊教育        
Special Education

 

 

 

インクルージョンが叫ばれているものの、依然、隔離教育

 

 

■教育機関  Educational Institutions 

日本の公立の義務教育は9年間。最初の6年間は小学校(6-12才)、3年間は中学校(12-15才)。高校(15-18才)は、2014年現在、義務教育の一環ではありません。

  

就学時アセスメントで、障害認定を受けた子どもは、その障害の種類・レベル・知的能力・理解力によって、下記のように「特別支援学校(旧:養護学校)・特別支援学級(旧:身障学級)・通級」3つのタイプの学校にアレンジされます。その他、障害の状態が重度で、特別支援学校への通学さえも困難な児童に対しては、特別支援学校の教員が家庭、児童福祉施設、医療機関等を訪問して行う訪問教育があります。

 

※インクルージョンとは、「包み込む」という意味で、それは障害をもつ人を含め、さまざまな違いを

 認め合い、障害をもつ人ももたない人も、共に学ぶ社会を目指すということ

 

特別支援教育の対象学校 Image:文部科学省
特別支援教育の対象学校 Image:文部科学省
盲・聾・養護学校から特別支援学校へ  制度の弾力化を図る Image:文部科学省
盲・聾・養護学校から特別支援学校へ  制度の弾力化を図る Image:文部科学省

特別支援学校(旧:盲/聾/養護学校)Special Schools

 

重度障害・重複化障害のある生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導・必要な支援を行う特別支援教育に対応するため、これまで障害種別に設けられていた「盲/聾/養護学校」が、2007年、障害種別を超えた「特別支援学校」に改められました。

この「特別支援学校」では、基本的にはこれまでの「盲/聾/養護学校」と同様、中重度の障害認定を受けた5種類の障害種別(視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱/身体虚弱)の児童が対象。通常の小学校、中学校及び高等学校と原則として同一の教育を行うと共に、障害に基づく学習上や生活上の様々な困難を改善・克服し自立を図るために必要な知識、技能、態度を育成するための教育を行っています。

 

健常児が行く普通の学校とは完全に分離されていて、知的障害児のクラスでは、「自閉症」「脳性麻痺」「ダウン症」といった症状で分けることはなく、みんな同じクラスになることが多いです。

 

 

特別支援学級(旧:特殊学級)Special Classes

 

比較的軽度の障害(知的障害・肢体不自由・身体虚弱・弱視・難聴・言語障害・情緒障害)がある児童を対象に、普通小学校、中学校に置かれた特別な学級。普通学校の中にはありますが、欧米のシステムのように、「健常児と一緒にできることはやる」といった交流は少なく、多くの場合、完全に隔離されています。


また、地域によっては、まだ設置されていない学校もあります。その場合、対象となる児童生徒は近隣の設置校に就学することになります。

   

 

通級  Resources Rooms

 

小学校、中学校の通常の学級に在籍する軽度の障害のある児童生徒に対して、各教科等の指導は主として通常の学級で行いつつ、障害に応じた指導を特別の指導の場で行うもの。対象となる障害には、言語障害・情緒障害・弱視・難聴・肢体不自由・病弱/身体虚弱が明記されてきましたが、20063月の学校教育法施行規則改正後、情緒障害者の分類を整理し「自閉症者」が独立して規定されると共に、新たに学習障害・ADHDの児童が加わりました。

 

 

 

■就学手続きの流れ  Placement Procedure
障害のある児童生徒の就学先決定について Image:文部科学省
障害のある児童生徒の就学先決定について Image:文部科学省

学齢簿の作成 (毎年1031日まで)

市区町村の教育委員会が、10月1日時点で来年度の新入学予定の児童の学齢簿を作成。

↓↓↓

就学時健康診断 (毎年1130日まで)

地域によって詳細は異なりますが、集団や個別での健康診断が行われます。「学校教育法施行令第22条の3」により、障害の程度・就学基準が設けられ、一部の介助があれば社会的生活を送るのに問題がない軽度のコミュニケーション障害の児童(目安IQ:50–70)は、小学校や中学校の特別支援学級、通級による指導または通常の学級に入学可能。それ以外の重度の障害を抱える児童(IQ:50以下)は、特別支援学校へ。2006年度から、自閉症者・情緒障害者・LD(学習障害者)・ADHD(注意欠陥多動性障害者)の児童も、通級指導の対象になりました。

 

障害の判断に関しては、その児童生徒にとって最もふさわしい教育を行うとの視点に立って、教育学、医学、心理学等の観点から専門家の意見を聴いた上で総合的かつ慎重に行う必要があるとは、文部科学省は唱っていますが、現状は慣習通り、主に「障害の種類」などの医療的診断結果を基に決められているケースが多いようです。

↓↓↓

保護者へ就学通知を送付 (1月31日まで)

診断で、普通学校への就学基準に満たないという結果が出た児童には、特殊教育を受ける学校へ就学させるべき旨を、都道府県の教育委員会を通して、保護者に連絡。就学すべき学校の入学期日等を翌学年の初めから2か月前までに通知します。都道府県の設置する学校が2以上ある場合は、都道府県の教育委員会が選択、指定します。

 

異議がある場合は、保護者は教育委員会と相談。最終的な結論は、児童の行動や親の希望、地域の現状(特別支援学校の空き状況、通学時間など)を配慮して決められますが、たとえ普通学級に入学を許可されたとしても、子どもの送迎や排泄介護、学校活動における手助けにおいてなど教育委員会からの配慮が十分でないため、保護者がその負担を担うことが条件になることもあり、結果、通学を途中で断念せざるをえないこともしばしば見受けられます。

 

欧米で積極的に取り入れられているHome Schooling(自宅学習)は、日本では卒業するのに正式な単位として認められてないので、普及していません。障害児の教育にはあまり選択肢がなく、隔離された中で行われているのが現状です。

 

 

 

■学習指導要項  Guidelines for Special Education

自閉症・情緒障害特別支援学級は小学校及び中学校に設置されていることから、教育課程の編成は、原則的には小学校又は中学校の学習指導要領によることになります。しかし、対象とする児童生徒の実態から、小学校又は中学校の通常の学級における学習には困難が伴うため、障害の度合いにより、「何が、どこまで、どのようにできるのか」「できないことをできるようにするには、何が必要なのか」という個々の成長の過程を綴っていく、特 別指導要綱になっています。小学部、中学部、高等部のいずれにも<自立活動>が加わるほか、小学部では、生活、国語、算数、音楽、図画工作、体育の各教科 と道徳、特別活動で編成することになっており、総合的な学習の時間を設ける必要はありません。自閉症・情緒障害特別支援学級の教育課程編成においては、小 学校及び中学校の教育課程の編成を基準にしながら、必要に応じて、特別支援学校学習指導要領を参考にして、学級や児童生徒の実態に応じた教育目標や教育内 容などを決定していくわけです。

 

自閉症・情緒障害を持っているこどもには、情緒の安定を図り、円滑に集団に適応していくことなどができるようにするために、多様な状態に応じた指導を行うこ とが大切です。基本的な生活習慣の確立を図ること、適切に意思の交換を図ること、円滑な対人関係を築く方法を獲得すること、目標をもって学習に取り組むこ と、不登校等による学習上の空白を埋め基礎的・基本的な学力を身に付けることなど、個々の児童生徒によって指導目標や指導内容・方法が異なってきます。

 

 

 

■親の参加  Parents' Involvement

学校と親とのコミュニケーションは、「毎年新学年に行われる家庭訪問・定期的な保護者授業参観・PTA懇談会・日々の連絡帳」などいくつかの手段によって行われています。

 

児童の教育において、親は重要な役割を担っています。親と学校とは平等のポジションを保ち、親はいつでも意見や心配事を学校とシェアし、関連した情報や支援 を求める権利があります。学校は、親のクレームにきちんと対応する義務がありますが、日本では、どちらかといえば、教師が主導権を握り、親の参加度合を決 めている傾向があります。

 

カナダ同様、日本でも親の参加は無論必須ですが、児童のカリキュラムを作るのも、評価するのも教師が中心になります。モンスターペアレントと言われているある一部の親を除いて、全体的に受身の印象があります。

 

 

 

 

インクルージョンが第一に考慮されるものの・・・なかなか難しい実現

 

 

■教育機関  Educational Institutions

カナダの公立の義務教育は、小学校・中学校・高校までの12年間。住んでいる地域によって若干異なりますが、ブリティッシュコロンビア州の場合は、小学校(6-12才)、中学校と高校(12-18才)が合わさった「Secondary School」となっています。日本にはない「飛び級システム」があるので、カッコ内の年齢は、あくまでも目安です。

 

カナダの教育システム Image:The Canadian Information Centre for International Credentials
カナダの教育システム Image:The Canadian Information Centre for International Credentials

カナダには、障害児のみが入学する特別支援学校(旧:養護学校)は存在しません。障害の種類・程度により、下記のように、バラエティーに富んだ選択肢からその子どもに最適な教育環境を考えることができるシステムになっています。

 

  • 通常授業(介助なし)---終日、健常児と共に通常授業に参加。

                必要な場合に限り、教師が専門家のサポートを受ける。

  • 通常授業(介助あり)---終日、または大部分の時間を健常児と共にアシスタント教師の介助を受け、

                     通常授業に参加。個別や少人数のグループで、特別課題に取組む。

  • 通常授業(外部介助あり)---アシスタント教師の介助を受け、学校生活の50%ほどは健常児と共に通常

                                               授業に参加。残りは、通常授業外にて個別授業に参加。

  • 特別支援学級(部分的交流)---学校生活の少なくとも50%ほどは、特別支援学級に通学するが、

                      一日一回は、通常授業に参加し、健常児と何らかの交流を図る。

  • 特別支援学級(交流なし)---終日、特別支援学級に参加。

 

このような感じで、比較的障害が軽度の児童は、普通の学校に通い、できる範囲で健常児と同じ授業に参加し、必要であれば、「Assistant Teacher」と呼ばれる教師がサポート。同じ教室にいながら、健常児とは別の課題に取組み、授業時間を費やすこともあります。障害が重い児童は、学校の中に設置された特別支援学級(旧:身障学級)に入り、日本と同じように、健常児との交流があまりない、隔離された空間での授業になることもあります。また、家庭で勉強する「Home School」という選択も可能です。

 

 

 

■就学手続きの流れ  Placement Procedure

 

学校・専門機関での入学手続き/面談 (Registration/Interview)

保護者は、子どもが6歳になる年に通常の学校か Home School を選択し、管轄の学校(地域によってはPlacement Centre)にて入学手続きを取ります。「子どもと一緒に」指定の時間に行き(場所によっては要予約)、入学登録書や出生証明書などの必要書類を提出。 面談をします。

↓↓↓

障害の判別 (Identification)

入学前に障害が判明していない子どもで、面談で障害の疑いがあると判断された子どもには、保護者の承諾を得て、専門家によるアセスメントを実施。

↓↓↓

最適な教育の選択 (Selection of the best education)

アセスメントの結果に基づき、学校・Placement Centre・School Board(教育委員会)・保護者が話合い、子どもにとってのベストな教育環境を決定。「特別支援学校行き」か「普通学校の特殊学級行き」かの選択ではな く、 「どのような学校生活を送るのがベストなのか」を決めるのが目的です。

 

健常児との「インクルージョ ン」を一番に考慮するのがカナダの教育方針ですが、障害の度合いによっては、何もかも一緒にできるわけではありません。どこまで参加できるのか、参加でき ない部分は、どのように補っていくのか・・・アシスタントティーチャーをつけて介助していくのか、ホームスクーリングにするのか・・・このベストの環境を 見つけるのが、子どもによっては難航する可能性も。(この辺は日本と同じですね。)

 

「インクルージョン」にこだわる保護者が、特別支援学級入学と決断を下した教育委員会を不服として、普通学校に無理矢理通わせ、誰の目にも子どもに悪影響を与えてしまい、結果、裁判沙汰となったこともあったようです。⇒[PDF]Emily Eaton's Case-Canadian Council on Learning

 

 


■学習指導要項  Guidelines for Special Education

 

「IEP(Individual Education Plan)」と呼ばれる個人の学習指導計画書に基づいています。カナダの文部省によると、IEPは・・・

  • 生徒独自の長所と必要性を明記

  • その生徒の症状に合わた特殊教育プログラムとサポートを吟味
  • そのプログラムとサポートをどのように提供していくかを検討
  • 実際の生徒の進展を見極め、見直し点があれば、その都度内容を変更

といった感じで、その生徒が取組む全てのプログラムの説明や毎日のスケジュールが記載されているわけでも、教師の効率を監視するわけでもありません。日本の個別学校指導要項とそれほど変わらないところがありますが、異なるのはその作成に関わる人達。IEPは 学校の先生だけではなく、生徒に直接関わっている保護者・専門家(アシスタントティーチャー・言語セラピスト・行動療法士・学校専属精神科医など)、可能であれば生徒自身の共同作業によって作成されるのです。基本的に、生徒のニーズにより、1対1か小グループによって学習体制が組まれます。

 

 

 

■親の参加  Parents' Involvement

学校のコラボレーションがとても重要です。児童の学習プログラム制作から進行までも親が協力して行っていき、内容を変更する にも親の許可が必要です。教育委員会や学校の決定事項にも反対の場合は、アピールする正当な権利があり、親はとても強い立場にいます。

 

・・・といいますか、逆に言えば、カナダ(西洋社会)では、受け身の社会ではないので、アピールをしていかないと、現状は変わりません。不満があっても我慢していれば、「満足している」「同意している」と想われてしまい、誰も気づいてくれないので、発言することが大切です。親の出しゃばり次第で子どもの環境が教育環境が変わるいっても過言ではありません。かといって、決して、学校や教師に喧嘩腰で文句ばかり言っていては、日本でいうモンスターペタレントという印象をもたれてしまい、かえって上手く行かなくなることも。日本と違って、生徒やその保護者を「お客様扱い」はしてくれないので、言い方を考えないと、反対に攻撃される可能性も。子どもにとってもかえって不利な環境になってしまうこともあるので、注意が必要。日本でもコミュニケーションを上手くとっていくことは大切ですが、カナダではその能力をさらに要求されます。

 

日本では、2007年に学校教育法が改正になり、特殊教育においても、障害の種類のみによって分離されていた従来の学校配置の柔軟化や、個々の生徒のニーズに対応した教育計画の徹底、欧米のような障害児でも社会の一員として受け入れられる「インクルージョン&ノーマライゼーション」の環境提供など。。。隔離された教育システムが見直されました。

  

文部科学省は、「障害の有無に関わらず、全てのこども達の性格や特性に合ったサポートをする密接的でかつ法活力のある教育環境になること」を目指しているのですが、諸外国のようには、なかなか浸透しずらいところがあるようです。

 

2010年に「インクルーシブ教育推進ネットワークが発表した意見書」には、差別の減らない障害者に関する教育現場での現状が報告されています。

 

目白大学教授で小児精神科医でもある山崎 晃資氏は、[PDF] 実施から1年―その課題と問題点―

で、日本の学校の現状での検討すべき事柄を挙げています。

 

・既存の普通クラスは、1人の教師に対して、3540人ほどの生徒がいて、障害があるこどもに特別に

   就く「アシスタント教師制度」はない。どのように「個々の生徒のニーズに対応した教育計画の徹

   底」を図ることができるのか?

 

・特殊学級で教える教師は専用資格が問われず、普通の教師免許さえあればなれるので、教師の中に

   は、普通学校への希望が叶わず、しかたなく特殊学級を担当する者もいて、経験もなく、障害児に興

   味すらない場合もあるという。今の日本には、まだ個人教育計画IEP=Individual Education Plan

   制度を取り入れて、的確にこども達を評価できる教師が少ない。

 

・現状の日本の学校に配置されているスクールカウンセラーは、常勤でなく、発達障害、情緒障害に精

   通している人たちも少ない。

 

  (欧米やヨーロッパのクラスサイズは、最大20人くらい。教師やアシスタント教師、スクールカウン

     セラーは専門の知識とトレーニングが要求される場合が多い)

 

 

どうやら、日本が採用している受験制度がネックになっているようです。韓国や中国の受験と比較すれば、そこまでドラマティックではないものの、より偏差値の高い、有名な学校に入学するために、日本の多くの子ども達は小さい頃から塾に習い事に忙しい生活を送っています。偏差値制度の見直し、ゆとり制度導入などの教育現場の変化はあったものの、あいかわらずのテスト点数指向。勝ち組に入るためには、他人をけ落としてでも這い上がって行かなければいけない競争社会です。

 

元校長先生をされていた方のは、ブログ「教育の窓・ある退職校長の想い:日本でインクルーシブ教育は実を結ぶのだろうか」で、このようにおっしゃっています。

だから、一部市民には、『共に学ぶ』ことへの拒否反応がある。障害のある子どもとともに学ぶことによって、競争から取り残されることをおそれるのだろう。 ---中略--- 国もいけない。一方で、インクルーシブ教育の推進をうたいながら、そして共生社会の実現を目指すと言いながら、他方では、全国学力調査の都道府県別ランキングを公表し、テストの点数指向をあおっている。

 

そんな環境の中では、≪自分達と異なる障害者を受け入れる心のゆとり≫ がどうやって、子ども達に芽生えるのでしょうか。。。

 

これらの問題点を見直さない限りは、「インクルージョン&ノーマライゼーション」の環境はまだ先のような感じがしますが、「障害児を隔離・差別することが当たり前」だったひと昔の日本から比べれば、嬉しい進歩です。

 

一方で、カナダなどの先進国でも、「インクルージョン&ノーマライゼーション」の環境は十分に整っているとは言えません。Canadian Association for Community Livingによると、知的障害児を持つ保護者の70%以上は、子どもが通常授業に参加していることで平均か平均以上の成績を上げることができていると報告をしています。同級生と一緒に学べる環境は、障害児にとってとてもいい刺激になり、学校を途中でドロップアウトする確率が減り、卒業後も仕事を得てコミュニティーで活躍できる機会が増えるというメリットがあるようですが、残念ながら、義務教育を受ける対象となる知的障害児の3分の2が、健常児とは切り離された特別支援学級での授業環境、または学校にまったく行っていないのが現実のようです。

No Excuses | CACL - Canadian Association for Community 

Education | Community Living Ontario

 

Canadian Association for Community Living