「妊婦全員の検査にせず」一致 新出生前診断、医師らルール策定【JAPAN】

妊婦の血液を調べるだけで、胎児にダウン症などの染色体異常があるかどうかほぼ確実に分かる新しい出生前診断について、導入を検討する医療施設の医師らが31日、会議を開き、新診断法の臨床研究を行う際に、妊婦全員が対象となる「マススクリーニング検査」として実施されないよう進めることで一致した。 

研究の実施施設の基準は厳格に設定し、出生前診断に精通した臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが複数所属する▽専門外来を設置し、1人30分以上のカウンセリングを実施する▽検査後の妊娠経過についてフォローが可能-などとした。

 

検査対象は、高齢妊娠▽以前に染色体異常の子供の妊娠経験がある▽夫婦いずれかが染色体異常の保因者である-などに該当する妊婦とし、染色体異常の妊娠の可能性が低い妊婦は検査の対象外とした。

 

 

安易な中絶増加危惧、「社会全体で議論必要」

 

 

国立成育医療研究センターなどが中心となって導入を検討している新診断法。会議の背景にあるのは、国内で出生前診断に対する共通認識ができず、環境整備も進まない中、簡単・安全に実施できる新診断法が世界各地で始まりつつあることに対する警戒感だ。

 

昨年10月に米「シーケノム」社によって始められた新診断法は、すでに行われている米国や中国、ドイツなどを含め20カ国以上で実施または実施予定という。その流れは日本にも押し寄せている。「中国の企業は、日本への参入を検討していた」と研究責任者を務める同センターの左合治彦周産期センター長。

 

羊水検査は流産のリスクもあることから、実施に躊躇する妊婦も多かったが、新診断法がなんの準備もなく国内に上陸すれば、多くの妊婦が安易に検査を行い始める可能性は高い。

 

染色体異常に対する社会の理解も進まない状況下では人工妊娠中絶の増加も危惧され、日本産科婦人科学会は、検査法への社会的理解と時間的猶予が必要と判断。一定の歯止めを設定した今回の臨床研究につながった。左合センター長は、「今回を契機として、出生前診断について社会全体で議論を深めていくことも必要だ」と話している。

 

2012.8.31 産経ニュース