障害者施設に基板解体を依頼 アンカーネットワーク、NPO法人と連携 【千葉】

リサイクル業者と障害者施設がコラボレーションして、パソコンの基板などからレアメタルなどを回収する取り組みが始まった。資源循環システムの構築と障害者雇用を両立させる環境・福祉ビジネスとして注目される。

提携したのは、OA・通信機器の買い取り・販売などを手がけるアンカーネットワークサービス(東京都葛飾区)と、NPO法人(特定非営利活動法人)「障害者リサイクルネットワーク」(千葉県木更津市)。

 

コラボの仕組みはこうだ。アンカーが企業から要らなくなったパソコンなどを買い取り、障害者リサイクルネットがその分解・仕分け作業を障害者施設に委託。障害者の手解体によって回収されたレアメタルなどをアンカーが素材買い取り企業に売却する。

 

アンカーはパソコンなどから回収したレアメタルの売却益を得る。障害者支援サイドは障害者に働く場を与えることで社会とのつながりを感じさせることができる。パソコンなどを提供する企業にとって、これまで産業廃棄物としてお金を出して処分していたものを買い取ってもらえるうえ、環境への取り組みもアピールできる。まさに“三方良し”のビジネスモデルだ。

 

アンカーの中間処理場である松戸リサイクルパートナーセンターの浜場秀一センター長は、「廃棄されるパソコンもきちんと分解・仕分けすればレアメタルを回収できる。コストがかかるといって廃棄するのはもったいない。かといって、そのための設備を新たに設けるのは難しい。そこで、地元の障害者施設に委託するという新たな仕組みを作った」と説明する。リサイクル率を高められる手解体へのこだわりも、障害者に委託することで維持できる。

 

障害者は小さいもの、同じ種類のものを数多く処理することを得意とする。しかし、障害者支援サイドは処理するものを集められない。このネックを、アンカーが企業から大量に調達することで解消できる。しかも障害者が作業しやすいように、データ処理したパソコンなどを種類ごとに分けて渡す。手順書を作り、健常者が指導するので慣れると早いという。

 

「これにより、障害者施設が作業を続けられない要因である『数がそろわない』『種類が変わる』『工賃が安い』のうち2つを取り除ける」と障害者リサイクルネットの小林光聖理事長は強調する。工賃も理論的には最大で月6万円もらうことも可能という。

 

松戸のセンターで、パソコンなどの分解・仕分けが始まったのは6月。8月には一度に8000台のパソコンを分解・仕分けする“一大イベント”が入るなど順調に推移している。

 障害者リサイクルネットが委託している障害者施設は、自立支援塾クリード北柏(千葉県柏市)、地域活動支援センター あい・び~(同)、就労移行支援事業所 北口はるか(千葉県我孫子市)の3カ所。

 

2012年度中に、柏市を中心とした東葛地域(野田市、流山市、松戸市、市川市、船橋市など)、茨城県水戸市で作業に参加する施設の開拓と作業指導の実施を目指す。13年には千葉県全域、関東地方の施設にも働きかけていく考えだ。

 

アンカーは企業から買い取った不要パソコンを適正循環させるため、リユースできるものは店舗やインターネットを通じて販売し、できないものをリサイクルに回す。浜場センター長は「産業廃棄物として埋め立て処理されると掘り出せない都市鉱山になる。解体されることで掘り出せる都市鉱山となり、資源の有効活用につながる」と指摘する。アンカーは今後、全国展開している企業をターゲットに事業展開し、障害者リサイクルネットも障害者施設の全国ネットワーク化を目指す。こうして環境と福祉の両立を図る。

 

2012.11.20 SANKEI DIGITAL