ニート、発達障害者を戦力に 府内で取り組み進む【大阪】

就労や就学をしていないニート状態の若者や、コミュニケーションなどが苦手な発達障害者たち。いざ就職をしようとすると企業側から敬遠されることも少なくない。しかし、一方では力の生かし方次第で戦力になりうると、その手法を企業関係者らに発信する取り組みも始まっている。大阪で進む直近の動きを追った。

■一緒に考えよう

「ミスは発達障害だからするのではなく誰でもする。あなたにミスをしやすい特性があるのなら、周りの人がどうすればいいのかを一緒に考えよう」知的障害者の入居施設に勤める看護師の元村祐子さん(42)は、上司の言葉に胸が熱くなったという。

 

臨機応変の対応ができない▽一度に多くのことを言われても覚えられない-。こうした特性から38歳の時に広汎性発達障害と診断された元村さん。

 

職場ではサポートの手法が検討され、人からの指示を元村さんがメモする際、一つのメモが終わらないうちに次の指示は出さない▽指示内容の優先順位は明確にする-などの決まりを設けた。その結果「とても働きやすく」なり、職場のサポートに報いようと「自分のできることを全力でやりたい」と元村さんは話す。

 

11月27日に大阪市内で開かれたセミナーの一幕。発達障害者自身が働きやすい職場について企業関係者らに語った。大阪府委託事業の一環でNPO法人発達障害をもつ大人の会(大阪市福島区)が実施。発達障害と企業の“懸け橋”となる活動をしようと、雇用側の理解促進、本人の特性理解に努めている。

 

広野ゆい代表は「発達障害に対応できる職場環境は、誰もが働き続けられる環境」と訴える。

 

 

■ノウハウを共有

ニートのうち働く意志を持って行動する若者を「レイブル(遅咲き)」と呼び、大阪府が支援団体や企業らと連携して行う就労支援事業「大阪一丸」では、働きづらさがある若者の多くに離職経験がある点を踏まえ、企業や個人が実践している「働きやすい職場環境づくり」を発信していく事業に乗り出す。

 

事業受託するNPO法人スマイルスタイル(大阪市西区)の塩山諒代表は、ニート状態の若者の雇用について「ノウハウやメリットがいるものの、それが世の中に出ていない」と指摘。「次世代ワークスタイル研究所」と称して実践者を招いた講演を開き、内容をホームページで公開する予定で、「全国の企業が共有できるようにしていきたい」という。

 

第1回は11日に大阪市住之江区の大阪府咲洲庁舎で、お好み焼き専門店で知られる千房の中井政嗣社長を招いて開く。同社が取り組む元受刑者の採用に関する仕組みづくりなどについて話を聞く。

 

問い合わせは電話06(6568)9199、同法人へ。

 

2012.12.3 大阪日日新聞