発達障害:小中生61万人 4割支援受けず 普通学級、平均2〜3人−−文科省調査・推計【JAPAN】

普通学級に通う公立小中学生の6・5%に発達障害の可能性があることが5日、文部科学省の調査で分かった。40人学級で1クラスに2〜3人が「読む・書く」が苦手、授業に集中できないなどの課題を抱えていることになる。調査対象地域の44都道府県(岩手、宮城、福島の3県を除く)を基に推計すると約61万4000人になる。このうち約4割は特に支援を受けておらず、専門家は「教員の増員などの手当てが必要」と指摘している。

調査は今年2〜3月、学習障害(LD)▽注意欠陥多動性障害(ADHD)▽高機能(知的発達の遅れのない)自閉症−−の発達障害の主な3要素について、44都道府県の普通学級に通う計5万3882人を抽出し、担任教諭が回答した。

 

「文章の要点を読み取れない」「簡単な計算ができない」などLDがあり、学習面で著しい困難がある小中学生は4・5%。「教室で離席する」などのADHDが3・1%。「周りの人が困惑することを配慮せず言う」などの高機能自閉症は1・1%。一部はこれらが重複していた。

 

発達障害とみられる児童生徒を学年別に見ると、小学1年が最多で9・8%。成長に伴い障害が改善され、小学4年7・8%▽中学1年4・8%▽中学3年3・2%だった。

 

また、38・6%は「個別指導」などの支援は受けておらず、学校内で支援が必要と判断された児童生徒(18・4%)でも6%が無支援だった。

 

調査に協力した大南英明・全国特別支援教育推進連盟理事長は「医師らで構成される専門家チームの設置や教員の増員などの対策が必要だ」と訴えた。

 

同様の調査は02年にも5県から約4万人を抽出して実施。発達障害の可能性がある子供は今回より0・2ポイント低い6・3%だった。

 

◇全教員の研修、不可欠

文部科学省調査の結果に、杏林大医学部の岡明教授(小児神経専門)は「実感としてその数字は理解できる。潜在的に困難を感じる子供はさらにいるのではないか」と話す。小学校長の経験もある愛知県の中学校長(58)は、学校では他生徒との間でトラブルが起きないよう注意を払っている。「生徒や担任、保護者が理解を深めれば子供も周囲に適応しやすくなる」という。

 

中には、授業が理解できなかったり叱られたりして不登校になったり、いじめや学級崩壊など問題行動を起こしたりする子供も。知的障害がない場合は普通学級に通うが、岡教授は「大人がそばで対応する必要がある」と指摘する。

 

文科省は教員の増員を進めているが、公立小中学校の教員で発達障害の研修を受けたのは4分の3(04〜11年度の実数)。どのクラスにも平均2〜3人がいるのなら全教員の研修は不可欠だ。

 

発達障害者や家族を支える支援は、放課後児童クラブの運営や生活介護が法律によって提供される。だが自治体で支援に差があるのが実情だ。NPO法人「文化学習協同ネットワーク」が07年に設立した特別支援教室「コスモアミークス」(東京都)には、週1〜2日、放課後に発達障害を持つ小学2年から高校2年までの10人が通う。職員の佐々木亨さんは「友達や大人から認められているという安心感があると、彼らの行動も落ち着く」と話す。

 

 

■ことば

◇発達障害

学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症などの総称。知的遅れがあるケースから遅れのない場合まで範囲が広い。周囲の理解や支援が不可欠で成長とともに改善する可能性がある。LDは「読む・書く・計算」が苦手▽ADHDは衝動的な行動▽自閉症は言葉の発達の遅れや他人とのコミュニケーション障害などがある。

 

2012.12.6 毎日新聞