障害乗り越え無事故10年 沼津・山本さん、顧客からも信頼【静岡】

知的障害がありながらも運転免許を取得し、トラック運転手になった沼津市植田の山本俊幸さん(36)が10年間、無事故で運送業務を続けている。夢に抱き、苦労の末に就いた職業。取引先からも「丁寧な仕事をしてくれる」と厚い信頼が寄せられている。

3段重ねの段ボール箱が、トラックの荷台に吸い込まれるように載せられていく。沼津市原の物流会社イーリード。山本さんは、慣れた手つきでフォークリフトを操った。
 地元中学の特別支援学級を卒業し、1989年に入社した。山本さんを採用した植松弘義さん(67)によると、当初は運送とは直接関係ない仕事をしていたが、入社4年目にトラックからの荷下ろし作業を任せると、生き生きとした表情を見せるようになった。
 

トラック運転手への憧れ。中学生のころ抱いた気持ちが、荷下ろし作業でよみがえった。「運転免許を取りたい」。山本さんは植松さんに打ち明けた。
 

周囲の反対を押し切って教習所に通ったものの、仮免許は8回、卒業試験は2回、学科試験は5回落ちた。2002年10月、念願の普通免許を取得した。最初の挑戦から2年。04年には大型免許の試験に1回でパスした。
 

「最初は心配だったが、今は模範ドライバー」(植松さん)。県東部を中心に、ほぼ毎日トラックを走らせる。関東圏まで出張することも多い。
 

沼津市足高の土井製菓総務部の本多まさ子さん(41)は「荷崩れしないよう工夫している。分からないことがあれば素直に聞いてくれる」と取引先の従業員として信頼を置く。山本さんは「安全運転を心掛けてコツコツ頑張る」と控えめに話す。

 

2012.12.7 静岡新聞社