【ひと】自閉症のモデルマウスを作製 群馬大助教・定方哲史さん【群馬】

群馬大先端科学研究指導者育成ユニットの定方哲史助教は東京理科大学・古市貞一教授の研究グループと共同で自閉症のモデルマウスを作製した。これまでの経緯や創薬など今後の可能性、研究者としての意気込みなどを聞いた。

--まずは自閉症について教えてください

 「3歳までに診断される精神疾患で対人関係の障害、活動や興味の範囲が狭い、同じ行動の繰り返しなどの特徴がある。親に問題があるとか子育ての仕方が原因という誤解があるが、最近では遺伝要因が大きく関与し脳の発達障害で発症すると考えられている。その発症メカニズムは分かっていない」

 

--そもそもは、ご自身が平成12年に発見した新規遺伝子CAPS2が始まりだったそうですが、マウスの作製に至る経緯は?

 「基礎研究のレベルでCAPS2タンパク質がBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促進することを突き止めていた。BDNFは神経ネットワークの形成に重要であり、精神疾患にも関連する分泌タンパク質。そこで遺伝子を潰してどうなるかを見たのが最初だった」

 

--どうなりましたか

 「CAPS2を全くなくしたマウスは自閉症のような行動を示した。人でも同様と考え自閉症患者の血液を調べたところ、予想外にCAPS2は作れていたが一部が欠損するという異常が患者だけに現れ、健常者には全く出なかった。そこでマウスでも一部を欠損させたら自閉症に似た行動を取るモデルマウスが作製できたという流れがあった」

 

--モデルマウスの作製で創薬などにむすびつくと期待されていますが

 「いろいろな薬を与えて行動が改善するかというツールにモデルマウスが使われる。創薬が実現できるのかは未知数だが、製薬会社との話も進んでいる。また、これまで自閉症は行動的な診断で判断していたが、遺伝子による生物学的診断が可能になる。もちろん自閉症全てがCAPS2によるものではないが、CAPS2タイプかどうか判定できるようになる」

 

--これからの研究はどう進みますか

 「実際に脳の中で信号がどう変わったのか解明できていないので、基礎的な部分をより詳細に解明していくのが当面の課題だ」

 

--ところで、群馬大学が新進気鋭の研究者のために平成22年度から導入したテニュア・トラック制で1期生として応募されましたが

 「研究者にとっては大学のポストが圧倒的に少ないなど厳しい状態が続いている。そうした中でチャンスを与えられ独立して研究をやらせてもらっている。理想的な環境であり、ステップアップを目指しながら、できれば群馬大に貢献したい」

 

--最後に、研究者としての信念を聞かせてください

 「研究者だった父親も言っていたことだが、常に本質的なことに関わっていたい。銅鉄実験のように横に伸びる取り組みはせずに、ぶれずに深く垂直に掘り進んでいきたい」

 

 ■さだかた・てつし 昭和49年、群馬大工学部教授も務めた父、正毅氏(故人)の留学に伴い英国・シェーフィールド市で誕生したが生後半年で帰国。小学時代は桐生市、中学時代は前橋市で過ごす。平成10年、東北大学理学部卒。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。独立行政法人理化学研究所研究員を経て23年3月から群馬大先端科学研究指導者育成ユニット助教。前橋市小相木町の自宅に妻と2人の子供との4人家族。休日は自然と触れ合うアウトドア派でもある。

 

2013.1.14 MSN産経ニュース