障害者雇用 超氷河期どころでない【JAPAN】

超氷河期と予想される大学生の就活が本格化したが、それ以上に厳しいのが障害者の雇用だ。法定雇用率を守らない企業は半数を超える。障害者もいきいきと働く場を提供するのは企業の責務だ。国内の障害者の人数や雇用の現状がどのくらい理解されているだろうか。障害者手帳の発行数によると、身体障害者が約三百七十万人、知的障害者が約五十五万人、精神障害者が三百二十五万人の計七百五十万人。国民のおよそ6%にあたる。

これに対し、働く障害者は約三十八万人(従業員五十六人以上の企業、厚生労働省調べ)しかいない。手帳交付者数のたった5%だ。障害者が通う特別支援学級を卒業しても、就職できるのは三割にすぎず、七割は自宅に引きこもってしまったりグループホームで集団生活を送る場合が多い。職業訓練を受け企業で十分働ける人も多いのに、雇用が進まないのは企業の理解や知識不足のためだ。

 

障害者の雇用促進法は現在、従業員五十六人以上の企業に対し、障害者を1・8%以上雇うよう義務づけている。しかし、達成した企業は約47%と半数に満たない。四月からは義務が強化され、「従業員五十人以上の企業に雇用率2・0%以上」になる。

 

未達成企業のうち、たび重なる指導でも改善しない場合は企業名を公表されるが、公表企業数は毎年一ケタ台だ。これは「改善を約束して公表を免れ、実際は未達成なまま」の企業が多数存在するということだ。このような「法律違反」を放置している現状は明らかにおかしい。

 

法定雇用率を未達成の企業(同二百人以上)から、不足分に応じ一人につき月五万円を徴収する「障害者雇用納付金」制度がある。このため、お金(納付金)で解決できると理解する企業も多い。障害者受け入れ企業には同納付金を原資とした助成金や報奨金制度もある。厚労省は企業側へ一段の説明や指導を尽くすべきだ。

 

企業に望みたいのは、発想を根本から見直すべきだとの点だ。形だけの社会貢献事業など見透かされる時代である。

 

これまでの健常者、障害者と区別するのではなく、共生する存在、互いに高め合う存在ととらえる。障害者がいきいきとして働く姿を見て、周りの社員がやさしくなったり、さらに頑張るといった好循環が生まれる。取引先や消費者へと、支援の輪も広まっていくはずである。 

 

2013.1.16 東京新聞