【ひと】水彩画:取り組み5年、市美術展ついに栄冠 知的障害ある浅野さんに努力賞、名張で29日まで個展【三重】

知的障害がある浅野幸子さん(40)=名張市桔梗が丘1=は5年前から、水彩画に取り組んでいる。独特の配色や構図のバランスが見る人の心を引きつける。08年から出品し続けている市美術展で、昨年初めて努力賞に選ばれた。指導にあたる石川勉さん=桔梗が丘4=は「上手に描こう、他人に評価してもらおう、という欲がない。無心で描いた作品だからこそ、人の心を打つのでは」と語る。

石川さんとの出会いは08年。市内の体験イベントに参加した浅野さんが、3色の色鉛筆で無造作に線を描いた。これを見た石川さんは「配色、バランス感覚が素晴らしく、絵を描くことを勧めた」。

 

市内の通所施設に通う傍ら、自宅で石川さんに指導を受けた。会話による意思疎通は困難だが、浅野さんは鮮やかな色の画材を好み、旅先などで見た花や魚をすらすらと描き始めた。母きよ子さんは「絵を描いている時が一番楽しそう」と目を細める。

 

4年前、初の個展を開いた。「心が温かくなった」「勇気をもらった」「心がなごむ」と来場者の反響は大きかった。「絵を飾らせて」との声も多く、市内の病院や喫茶店で作品が飾られている。

 

浅野さんは今年、県内の障害者を対象にした「県障がい者芸術文化祭」の絵画部門に出品。技術の高さなどが評価され、62点の中から、最優秀の知事賞に輝いた。きよ子さんは「近所の人から『ゆきちゃん、描いてる?』などと声を掛けてもらえるようになり、絵によって娘と社会との接点が広がった」と話している。

 

29日(金)まで、桔梗が丘1の百五銀行桔梗が丘支店で、水彩画展が開かれている。ピンク、オレンジなど、鮮やかな色遣いで、画用紙いっぱいに春を表現した抽象画16点を出品した。午前9時〜午後3時。浅野さん(0595・65・0084)。

 

2013.3.15 毎日新聞