自閉症の子を持つ親たちの解消されない不安【ON CANADA】

先月30日、重度の自閉症を患う19歳の息子の家庭での介護が限度を超えていると、最愛の息子を州の施設に入所させる決断をしたオタワ在住のアマンダ・テルフォードさん。政府からの十分な援助が得られなかったことが、その一番の理由だったと彼女はメディアに訴えているが、このことは他の障がいを持つ子供の親にとっても同じだ。

 

自らも自閉症の子供を持つオンタリオ州セント・キャサリンに住むカレン・マジアールさんは「彼女の気持ちが痛いほどわかる。私も同じ状況だった」と語る。彼女は、政府が提供する援助プログラムは親の側からはわかりにくく、そのことが申請を困難にしていることを痛感した。そこで8万ドルの自費をかけて、障がい者の介護に関わる人たちに向けたヘルスケア・システムの情報提供を始めた。

 

マジアールさんの長男ジェラルド君には、2歳の時に学習障害と運動機能障害が現れた。9歳の時には、筋肉内の圧力が高まることで循環障害を起こし、筋や神経の機能障害を引き起こすコンパートメント症候群を発症、左下肢の筋肉を失う。

 

歩行のためには足を固定する器具が必要となった。その後注意欠陥障害と診断されたが、それが誤診であり、最終的に自閉症と知的障害との診断がなされたのは、14歳になってからだった。

 

シングルマザーのマジアールさんはマーケティング会社を経営する傍ら、ジェラルド君と、その弟の子育てを続けてきた。前出の足の固定器具は、自らのRRSPから6000ドルを切り崩して購入した。

 
彼女は当時、オンタリオ州が提供している支援プログラムや、補助器具購入のための資金援助制度について全く知らなかった。たまたま、そのことについての会話を耳にしたことから、彼女はそのようなプログラムの存在を知り、詳しく調べ始めた。

 

そして2004年に、障がいを持つ子供の親のための情報提供サイト「Disability Advocate Gerard」を立ち上げた。

 

オンタリオ州には、自閉症を抱える家族が10万以上あると言われている。オンタリオ州政府の青少年サービス省のブレアン・ベッツ氏は、そのうちのいくらかの家族は、利用可能な援助プログラムを認識していないだろうと認めた上で、より効果的にその存在を周知できるように努力していると語った。

 

また障がいを持った子供が18歳になると、その援助は地域・社会サービス省に移管されるが、申請から承認までに時間がかかり待ち行列ができているのが問題視されている。さらに多くの親は、子供が21歳になると学校が本人を生徒と認めなくなり、通学できなくなることを危惧している。

 

オンタリオ州オークビルに住むジム・ウィットさんの息子、ハリソンさんは重度の自閉症で22歳になる。21歳までは公立学校を通じて様々な支援を受けられてきたが、24時間介護が必要な彼に対し、今は何もないとウィットさんは語る。

 

工場を経営するウィットさんは、年間12万ドルを稼がなければ、ハリソンさんのための民間介護サービスを維持できない。「現在、週5人のシフト体制で介護をしてもらっている。毎朝『今日は何事もなく仕事に行けるだろうか』と祈るような気持ちで目が覚めるよ」と語った。

 

【2013.7.3 バンクーバー新報】