障害児保育、広がる 看護師やNPOが開設【JAPAN】

保育園での障害児の受け入れが広がっている。仕事と子育てを両立させたいという親のニーズの高まりが背景にある。障害児を育てる母親が仕事を続けることへのハードルは依然として高く、親子の心身の健康維持のためにも支援が必要との声が強まっている。

横浜市のNPO法人カンガルー統合保育園。「きのうは何をしたの」という保育士の問いかけに、輪になった子供たちが順に答えていく。その中に、人工呼吸器を付けた重度障害児の綾優太君(4)の姿があった。

 

優太君は先天性の病気で24時間介護が必要だ。両親共に働いているが、近くに受け入れてくれる保育園がなかったため東京都内から横浜市に引っ越してきた。

 

カンガルー統合保育園は2002年、重い病気を持つ子供を治療する新生児集中治療室(NICU)の看護師らが開設。退院後の子供たちが社会の中で過ごす場が、極めて少ないという問題意識があり、障害児と健常児が一緒に過ごせる保育園にした。

 

保育園のスタッフで、看護師の冨永貴子さんは「夜中も目が離せず、母親の身体的疲労は特に大きい。日中は子供を預けて仕事をし、自分らしく生きられるようになったという声も聞く」と話す。

 

厚生労働省の調査では、障害児を受け入れている保育園は12年度で全国に1万4658施設あり、前年度より165施設増えた。保育園に通う障害児も約5万人と、5年前より4割以上増加した。

 

仕事で職場を離れられない親に代わり、自宅を訪れて病気の子供を保育する認定NPO法人フローレンス(東京)は4月から、保育園に通っている障害児らも訪問病児保育の対象に加えた。

 

フローレンスはこの秋には、障害児を専門に受け入れる「障害児保育園ヘレン」を東京都杉並区に開設する。障害を抱え、通常の保育施設では預かるのが難しい未就学児を受け入れる。

 

ただ障害児の受け入れには課題も多い。障害児保育に詳しい日本福祉大の近藤直子副学長は、保育士を手厚く配置する必要があるため、通常より人件費がかかると説明。「財政面の支援が不可欠」と訴えている。〔共同〕

 

 

【News Source:2014.8.6 日本経済新聞