アセスメント        
Assessment
Image:by IAEA Imagebank CC BY-SA 2.1 JP
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どちらの国も、国家資格をもった精神科医・小児科医・神経科医などの専門家による医学的診断を基準に、心理学者や行動療法士、言語療法士などのさま ざまな 分野からの情報も考慮に入れて、総合的にアセスメントが行われますが、自閉症の診断は、きわめて複雑で、「必ず自閉症と一発で判断可能な 保障されたチェック リスト」があるわけではありません。

 

重度の場合は、即診断されるかもしれませんが、特に際立った知的 障害を併発していない場合は、診断が下るのに何ヶ月も、何年もかかることもあります。健常児との境にあるような、軽度または高機能の障害の場合、親がいく ら心配事を訴えたとしても、医師によっては 「精神的な情緒障害で一時的なもの」などと判断されてしまうかもしれません。

 

もちろん、医師の業務上の責任があるので、診断結果には慎重になるのは当たり前なのですが、それには、別の理由があるのも事実です。

 

日本でもカナダでも、「障害児/者に認定することは、行政の助成支援対象に選ぶこと」国家予算にもかかわってくることなので、専門家もそう簡単には障害者認定をしてくれないのです。

 

日本では、複数の病院を回って、セカンドオピニオンを得ること。カナダでは、ファミリードクターとの関係を築いていくことが大切です。

 

 

 

 

 

市区町村で行う乳幼児健康診査が 最初のアセスメント

 

乳幼児健康診査は、 母子保健法第12条及び第13条の規定により 市区町村が乳幼児に対して行う健康診査。赤ちゃんの病気の予防と早期発見・成長のチェック・育児に関するアドバイスを受ける場です。時期になると、市役所から通知ハガキが来て教えてくれます。健診費用は、通常は国や自治体負担となるため無料(一部の自治体には多少の負担があるところも)。居住地域によっては、健診の内容も対象年齢も若干の差はあるものの、だいたい以下の通りです。

 

● 新生児健診

日本では、一般的にこの時期の赤ちゃん達は産婦人科の新生児室で過ごしているので、生まれてから、はじめてお家へ帰るまでの間にある検診。母親の胎内での生活から、外の世界への対応の為の変化の時期。外表奇形や先天性心疾患等の先天異常のチェックやミルクの飲み工合、新生児黄疸のチェック等が検診の目的です。

 

● 1ヶ月健診

先天的な異常がないかどうか、赤ちゃんの身長、体重(ミルクの飲み具合)、胸囲、頭囲の計測と、とれたへその緒の後は乾いているかの確認、心臓の診察、股関節脱臼の検査、検尿、母乳のビタミンK不足による頭蓋内出血予防のためにビタミンKの投与をおこないます。

 

● 3~4ヶ月健診(義務)

身長・体重・胸囲・頭囲の身体計測、首のすわりなどの発達のチェック、股関節脱臼、斜頚や心臓の異常のチェックなど。この健診では「あやすと笑うか」「目で物を追うか」「首のすわり方」「原始反射が消失しているかどうか」などが、発達状態をみる上で重要なポイント。あやしたときの様子、おもちゃの握り方など、お家での様子をよく観察し、質問をされたら答えられるように。脂漏性湿疹など、何か不安を抱えている場合は、この機会に相談。

 

● 6~7ヶ月健診

寝返りやおすわりなどの体の発達、心の発達、引き起こし反応や顔に布をかけてとるテストなどを行います。この時期は、運動機能や知能の発達異常が見つかりやすい時期。7ヶ月頃の赤ちゃんなら、手離しや手をついてしばらくすわっていられるかどうか、おもちゃを上手につかむことができるか、などを見ます。お家でのおすわりの様子、おもちゃを要求して取るときの様子などをよく観察しておきましょう。「神経芽細胞腫」の検査が済んでいるかどうかも確認。

 

● 9~10ヶ月

ハイハイやつかまり立ちなどの体の発達と、積み木をつかむテストなどで精神面の発達をチェック。発達は大きく個人差が出るときですので、ハイハイができていなくても心配し過ぎないように。赤ちゃんが何かできるようになったら、日付を母子手帳に記入しておきます。これまでの健診で先天的な病気や異常はすでに発見されていますが、視力や聴力など、判別ができなかった病気が見つかることも。そろそろ人見知りが激しくなり、診察を嫌がる赤ちゃんも増えてくるので、その分、下痢や嘔吐をしやすい、よく熱を出す、風邪をひくとゼーゼーいいやすいなど、お家での様子をよく観察して、聞かれたことに答えられるようにしておきましょう。

 

● 12ヶ月健診

12ヶ月健診を実施している自治体は少ないですが、生後12ヶ月目は育児不安の2度目のピーク(一度目は生後1ヶ月)がくるという報告もあります。気になることや不安なことがあれば小児科を受診して相談してみるとよいでしょう。この健診では、発育状態、大泉門の開き具合、陰嚢水腫がある場合は消失しているかどうかなどを見ます。

 

● 1歳半健診(義務)

● 3歳健診(義務)

一番のポイントはひとり歩きと言葉の発達。運動機能・精神発達・生活習慣の自立などの健康診査と内科健診に加え、歯科検診も。

 

 

赤ちゃんと健康診断を受けに行こう-赤ちゃん成長ナビ から引用させていただきましたので、健常児の成長の目安です。9~10ヶ月健診の項目で、「これまでの健診で先天的な病気や異常はすでに発見されていますが」というフレーズがありますが、自閉症児の場合、この時点で『自閉症』と正式な診断が下りていることは非常に稀です。お子さんの症状によって異なりますが、3~4歳くらいまでに発見されることが多いので、この乳幼児健康診査で発達の遅れが心配され、専門病院でのアセスメントを勧められる可能性が高いです。

 

まず、発育記録を取り、当サイトの下記の項目を参照に、お子さんを観察してください。

   「Q7:自閉症かどうか・・・は、どうやって判定していますか?

   「自分でできる自閉症チェック

   「症状/特徴併発しやすい症状間違いやすい症状

 

もしも、アセスメントを勧められたら・・・

日本は、ファミリードクターを持つという制度はありませんので、専門病院(一部を除き)も紹介状なしに予約を入れて、受診することが可能です。お子さんに最適だと思われる病院を選んで、検査を受けます。ただし、アセスメントには、健康保険で決められた自己負担額を支払わなければいけません。

 

お住まいの地域によっては、対象年齢の子どもが大勢いて、待ち時間が長いこともあります。「面倒だ。」「仕事を休まなければいけない。」と、嘆かれる方もいますが、一部の健診は親御さんに課せられた”行政への義務”です。「子どもの健全な成長を専門家にチェックしてもらう」という親御さんへのメリットだけでなく、「子どもの成長と共に、虐待がないかを含めての生活環境を把握する」行政側の責務でもあるのです。

 

もちろん、≪健診に来ない=虐待≫というわけではありませんが、虐待を早期に発見する目的で、無連絡で健診に来なかった家庭には保健所から何らかの問い合わせが来るようになっている自治体も多いようです。必ず、行くようにしましょう。

 

 

 

 

 

ファミリードクターへの相談が アセスメントへの第一歩

 

日本の医療制度と異なる点のひとつが、ファミリードクター制度です。カナダでは、眼科医や皮膚科医などの専門医に診てもらいたくても、殆どのケースでは直接には会えません。必ず、ファミリードクターからReferrral (紹介状)をもらって、予約をする必要があります。

 

※カナダで妊娠・出産されている方は、おそらくファミリードクターがいらっしゃることだとは想いますが、お子さんと一緒にカナダに移住された方など、特定のファミリードクターがいらっしゃらない場合は、「Walk-in クリニック(誰でも日本のような感覚で行ける診療所)」に行き、ドクターからの紹介状をもらいます。

 

・・・ということで、お子さんの様子に「何か変だな」と感じられたら、まずは、(自閉症について知識があまりないドクターだとしても)ファミリードクターに相談。ドクターが更なる検査のが必要だと判断したら、紹介状を発行、別の専門機関でアセスメントを受けます。

 

一口にカナダといっても、居住地域によっても医療制度が異なりますが、BC州(ブリティッシュコロンビア州)では、BC州に6カ月以上滞在する人(旅行者など一部を除く)に、国民健康保険(Medical Service Plan)に加入することが義務付けられ、毎月の加入料金さえ支払っていれば、目と歯以外のほとんどの治療が無料で受けることが可能です。自閉症の診断も、州が指定している公立の機関であれば、無料で対応してくれますが、無料なゆえに、自閉症だけでなく、さまざまな専門検査の予約が殺到して、待機期間が長期に渡ることが多々あります。自閉症をはじめとした発達障害のアセスメントには1~2年かかることもあるので、即検査をしたいのであれば、私立の専用機関を利用するしかありません。しかし、高額な検査費用が$3000~$500030万~50万円)かかってしまいます。 

 

 

➢ アセスメントの詳細は・・・バンクーバーの場合、「バンクーバー情報」の「アセスメント」欄

➢ 医療制度の詳細は・・・「育児はカナダ?日本?」の「福祉・医療」欄