保育        
Child Care System
Image:by emilygoodstein CC BY-SA 2.1 JP
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日本とカナダの最大に異なる点のひとつは、認可保育園の入園条件と申請方法です。

 

 

■公立・私立認可保育園

 

【入園条件】

日本の場合、どこの自治体でも、認可保育園入園についての選考基準があり、その多くはポイント(係数)形式。誰でも利用できるわけではなく、保護者が「保育に欠ける要件(=仕事をしていること)」が申請可能条件になります。2015年4月から施行される新保育制度では、現行制度では認定されにくかった「求職活動中の人」「就労を目的とした技術訓練校などの通学」「出産を控え育児休業を取得する人(期間限定保育)」も保育が必要と認定されますが、あくまでも、「ひとり親家庭」「生活保護世帯」「保護者が病気・障害を抱えている」「同居親族の介護」など。。保育の必要性が高い世帯には、各種の調整指数が加算され優先されます。同じ「就労」でも、パートよりフルタイム勤務、自営業よりも普通の会社に勤務するの方がポイントが高くなります。同じ「夫婦揃っている共働き家庭」でも、祖父母と同居している(介護が必要ない場合)よりも、核家族の方がポイントが高くなります。

  

カナダの場合、あくまでも、子ども達の教育を受ける権利に則った「教育」にフォーカスされるので、基本的に平等。保育園でも幼稚園でも「 Spaces are offered on a first come first serve basis based on date of the pre-enrollment form.(申し込み順に受付)」となります。申請者である親が専業主婦でも、失業中でも、学校に通学していても、子どもが健常児であれば誰でも入園申請 可能。「ひとり親だから」とか「サポートしてくれる親戚が誰もいないから」などといった家庭状況で申請順位が変わることは原則的にありませんが、その保育 所に兄弟姉妹が通っていたり、通園歴が過去数年内にあったりする場合は、優遇される可能性が高いです。また、妊娠中に申込して、受入れの順番が回ってきた時点で、まだ子どもが生まれてない場合は、当然通園は不可能なため、入園資格が次の申請者の子どもに移行。通園可能時期になった時点で、優遇処置がとられます。

 

 

【申請方法】

日本の場合、公立・私立どちらの保育園も手続きは住んでいる地域の市区町村役所で行います。保育園入園の選考はおおむね月に1度開催。担当職員が各世帯のポイントを計算、優先度を勘案して入所先を調整します。毎月の申込み期限は、自治体によって異なりますが、「4月の申込みが最も希望が通りやすく、年度後半になるにしたがって入りにくくなる」「年齢が上がるにしたがって入りやすくなる(低年齢になればなるほど保育士の人数も必要になり、3歳以降の場合は幼稚園という選択肢もあり、保育園には空きが出やすくなるので)」という傾向があるようです。注意なければいけないのは、公立・私立保育園とも、住んでいる市区町村内の園にしか入所できないこと。「引越しをしたが、今まで通っていた保育園に通わせたい」とか「通勤の都合上会社のある町の保育園に通わせたい」という場合、役所に広域入所の手続きをして許可が下りれば可能。

 

カナダの場合、保護者が通わせたいと思う保育園に直接問合せ、見学し、申請をしなければいけないので、親の負担・責任が大きいです。一度に申請可能な保育園の制限はないので、入所のチャンスを高めるため、普通はいくつもの保育所に同時申請し、空きが出るのを待ちます。

 

 

 

■公立・私立認可幼稚園

 

【入園条件】

日本の場合、保護者の就労は問われませんが、3歳以上に限られ、入園は「申し込み順に受付」や「面接・試験・健康診断ののち抽選」と様々です。

 

カナダの場合、公立幼稚園の条件は、上記の保育園と同じですが、私立では「面接・試験」などの選考過程を経てというところが多いです。

 

 ※どこの国でも、私立の場合は、親の経済状況、所謂「どれくらい寄付をしてくれるのか」という指標も、

  裏の選考基準になりえるとも言われています。

 

 

【申請方法】

日本の場合、各幼稚園や市区町村の窓口などで配布されている各幼稚園に提出。申請書を公立は住んでいる市区町村内の園にしか申請できませんが、私立はどこの市区町村の幼稚園でも自由に申請可能です。

 

カナダの場合、方法は上記の保育園と同じです。

 

 

■公立・私立認可保育園/幼稚園の障害児受入れ

日本でもカナダでも、子どもに障害がある場合、受入れてくれるかは、住んでいる地域・州・ 保育園/幼稚園次第です。自治体独自で「障害児の受入れを各施設○%にする」といった制度を設けているところもありますが、幼児教育は義務教育ではないため、厳重に法によって義務化をされているわけではありません。それは、障害児を差別するというモラル的な理由ではなく、障害の種類・レベルによっては団体行動がまったくできなかったり、他傷癖のある子は他の健常児の子ども達に危害を加えてしまったり・・・と、園のプログラム運営が困難になってしまう可能性があるからです。学校のように、障害児でもサポートワーカーをつけて個人個人のレベルに適応したプログラムを作成する運営費は、特別な施設を除いて、持ち合わせていませんし、国からの助成金も限られてきます。専門知識があるスタッフも稀です。また、身体に障害がある子どもは、建物自体がバリアフリー建築になってないため、通所には危険が伴う可能性もあります。

 

このような背景から、「空きが少ない」という待機児童の問題だけでなく、「空きがあっても、受入れをしてくれるところが非常に少ない」更なる狭き門になっているので、無認可保育に頼るか、保育機関は諦め、親自身がケアしているケースも多いのが現状です。

 

厚生労働省の調査では、障害児を受け入れている保育園は2012年度で全国に1万4658施設あり、前年度より165施設増え、保育園に通う障害児も約5万人と、5年前より4割以上増加したとのこと。日本でもカナダでも、障害児自体の数が年々増えてきている実態を考慮し、保育園・幼稚園での障害児の受入れや、NPO団体による特別施設の開設が広がってきています。

 

  ※注意※

日本の保育園申請で、障害児を持つ保護者がやってしまいがちな失敗に、「健常児と交流させて、いい刺激をもらいたい」と、申請理由を言ってしまうことです。先述の通り、あくまでも「生活の困っている度が高いこと」が、受入れの基準になっているので、たとえ就労をしているなどのその他の条件を満たしていたとしても、この「健常児との交流」を口にしたとたん、優先順位が下がり、却下される可能性が高まってしまうので、心の中にだけ留めておきましょう。

 

 

以下は、両国の健常児を主体とした保育施設・形態の種類です。

 

 

 

 

親の「就労状況・困ってる度」により認定された児童だけが入れる認可保育所。対策はとられているものの、以前進展しない待機児童問題。

 

 

保育所(一般的に「保育園」と呼ばれる法令的名称)

対象年齢は、0歳から小学校入学まで。厚生労働省が所轄する「児童福祉施設」の一種。子どもにとって、両親が共働きであるため自宅の代わりに過ごす「生活の場」。原則8時間ですが、保護の労働時間や通勤時間などを考慮して延長・夜間保育を実施。現在では、11時間くらいの保育所が一般的となりつつあります。保護者が保育に欠ける状態である限りは保育を行なう義務があるため、長期休業期間は、設けていないところが多いです。

 

  • 認可保育所

    厚生労働省が定めた最低基準と各自治体が定めた基準を満たし都道府県知事から認可を受けた保育所。運営費の補助を受けています。運営者によって公営と私営に分類する事ができますが、保育内容が大きく変わる事はありません。

     

  • 認可外保育所

    乳幼児を保育することを目的とした施設。「認可を受けていない施設」や「なんらかの事由で、認可を取り消された施設」のこと。認可以外のすべての保育施設のため、個人経営や法人経営・営利・非営利・小規模・大規模と様々な形態の施設があります。大きく分けて3種類に分類でき、「事業所内保育施設・ベビーホテル・その他の認可外保育施設」があります。


 

幼稚園

対象年齢は、3歳から小学校入学まで。文部科学省が所轄する「学校」の一種。幼児教育の一環として、子どもにとって「通学施設」。4時間を基準とし、必要に応じて定められています。小中学校と同じく保護者の都合とは関係なく休みがあります。年間39週を下回らない範囲で夏休み、冬休みなどの長期の休みもあります。

 

 

認定こども園 文部科学省・厚生労働省専用サイト

対象年齢は、0歳から小学校入学まで。保護者の就労の有無にかかわらず受け入れ、教育と保育の両方の機能を提供するとともに、地域における子育て支援事業を行う施設。都道府県知事の認定を受け、幼稚園や保育所等が単独または連携して運営します。

 

  • 幼保連携型

    認可幼稚園と認可保育所とが連携して一体的な運営を行うタイプ

     

  • 幼稚園型

    認可幼稚園が、保育に欠ける子どものための保育時間を確保するなど、保育所的な機能を備えて認定こども園としての機能を果たすタイプ

     

  • 保育所型

    認可保育所が、保育に欠ける子ども以外の子どもも受け入れるなど、幼稚園的な機能を備えることで認定こども園としての機能を果たすタイプ

     

  • 地方裁量型

    幼稚園・保育所いずれの認可もない地域の教育・保育施設が、認定こども園として必要な機能を果たすタイプ

     


家庭型保育 

 

  • 保育ママ

    育児経験者や、「保育士・教員・看護師・助産師・保健師」などの資格を持つ保育経験者が

    昼間家庭で保育が困難な保護者に代わって子どもを保育する制度。少人数保育のため、ご家庭とコミュニケーションを密にとりながら、低年齢のお子さん一人ひとりの状態に配慮したきめ細やかな対応ができ、お子さんにとっても親しみやすく安心感が得られる保育環境が特徴です。市の基準にそった保育専用のスペースを有し、保育環境が整った保育ママの自宅において、お子さんの保育を行う≪居宅型≫と、保育ママ3人が1グループとなり、同一の建物で、相互に協力して保育を行う≪グループ型≫があります。

     
  • ファミリーサポートセンター  女性労働協会

    働く人々の仕事と子育てまたは介護の両立を支援する目的から、厚生労働省が構想・設立。育児や介護の援助を受けたい人と行いたい人が会員となり、育児や介護 について助け合う会員組織になっています。会員の方が安心して育児または介護に関する相互援助を行えるよう、センターでは会員を対象に、育児または介護に 関する知識・技術を身につけるための研修会も実施しています。介護員はあくまでも一般人なので、障害児の受入れは、残念ながら完全に保障しているわけではありません。面接を詳細に行ってから、「軽度の障害なら」とか「医療行為を伴わない」などと一定の基準を設け、提供会員のできる範囲内で受け付けている感じです。

     

  • ベビーシッター

    職種は、上記の「保育ママ」と「ファミリーサポートセンターの介護員」と同様の個人による保育者ですが、他の二種は、厚生労働省や市区町村の公共団体が運営・管理しているのに対し、ベビーシッターは現状で法規制はなく、誰でもできる野放し状態。開業の届け出義務はなく、資格も必要ありません。一応、「認定ベビーシッター」になるための試験はあるものの、あくまでも民間企業が独自に実行。国家試験である保育士のようなレベルではなく、通信教育で簡単に取得可能な感じです。2013年ベビーシッターを名乗る男が、預かっていた男児を自宅で殺害したとされる事件 をきっかけに、ベビーシッターなどの規制について検討しようとする動きが出ています。

     

     

放課後等デイサービス(障害児学童保育)独立行政法人福祉医療機構-WAM NET

障害を持つ小・ 中・高校生が、放課後に活動する場を確保するとともに、日常生活訓練や卒業後の地域生活へのスムーズな移行を目指す場を提供。障害児を持つ親の就労支援と介護負担の軽減を図ります。常時医療的ケアが必要な場合や、行動の特性から集団での活動等が困難である場合は、利用できない場合があります。

 

 

 

 

 

親の状況に関係なく、誰でも可能な入園申請。受入れは、受付順。

カナダでも深刻化する 待機児童問題。


カナダでは、12歳以下の子どもを独りで留守番をさせるのは違法にあたります。「仕事が忙しく、低所得家庭で保育者を雇うお金がないので・・・」や「ちょっとした買い物で、たった5分なので・・・」など。。。どんな事情があったにせよ、自宅や車内に子どもを独りで置き去りにしたことが公になれば、保護者は逮捕されてしまいます。このようなシステムのため、日本で共働き夫婦やひとり親家庭の子どもにありがちな「カギっ子」というフレーズは、世間的にはタブーになっていますので、保育所の確保は、幼児教育の必要性だけでなく、日本と異なった意味でも重要になっています。
きちんと政府からのライセンスがある認可された保育所は、もともと子どもの全人数に対して十分ではないため、日本と同様、待機児童の問題が浮き彫りになって います。2014年現在、健常の0-12 歳の児童の空き状況は、どこの州もわずかに20%前後。まさに、10人に2人くらいの割合でしか受け入れをしていない現状があります。一つの保育所での許容人数に制限を設けられているからでもあるのですが、これは教育の質の向上を考えてのことというよりは、ただ単に法律で定められているからのようです。こ の待ち時間の長さを懸念した親達の中には、妊娠と同時に希望の保育園に申し込みをする方々も少なくありません。
無認可保育は、空きを比較的見つけやすいこと、プログラムに柔軟性がある可能性が高いことは魅力的ですが、いかんせん外部からのチェックがない点が心配です。一方、認可保育園はライセンスを取得しているので、一見安心のように見えますが、ライセンスがあるからと言って、決して質の高いプログラム内容が提供 されているとは限りません。大切な子どもを預ける機関ですので、親としては慎重に検討したいところなのですが、多くのカナダ人は、空きがなかなかないた め、あまり選択肢がなく、無認可のファミリー保育を選ばざるをえない状況にあります。
いくつかの州では、「通常の保育プログラムにおいて、どのように障害児を含めて行くのか・・・を記したガイドライン」が作られていたり、「Itinerant consultant model (特別支援教育巡回相談=障害に関する知識・技術を持った外部の専門家が、実際に訪問し、現場の保育士と共に障害児支援の方法を検討する営み)を元にした保育」を行うなど。。。障害児の幼児教育に熱心に取組んでいる地域があります。

 

 

Full-Day Child Care Centres 平日週5日制の認可保育所

運営には必ず政府公認のライセンスが必要。(Montessoriや宗教関係の私立保育所ではライセンスがいらない州もあります)「受入れ人数・スタッフと子どもの割合・スタッフの必須トレーニング・保育施設のサイズ・食事内容・プログラム内容・安全衛生管理・活動内容の記録義務」などの州政府が決めたルールに従って運営しなければならず、定期的に政府関係者からの調査が入り、不備はないか確認をされます。

 

 

Part-Day Programs  平日週5日未満のプログラム

Rental Assistance Program

内容の詳細は異なることもありますが、殆どの州では共通したライセンスに基づいたシステムによってプログラム内容が決められています。ただし、Saskatchewan・Quebec・Yukonの3州は、ライセンスがなくても、パートタイムプログラムを提供することができます。

 

 

School-Age Programs  学齢期児童のプログラム

通常は12歳までのプログラム。開始年齢や内容の詳細は異なるものの、全ての州で規制されています。学校内で行われているものも含めて、いくつかの授業前/放課後プログラム・夏期/休日プログラム・サマーキャンプ(日帰り・宿泊を問わず)は(一部を除き)、特に「保育所」としてライセンスを取得して、認可を受ける必要ありません。

 

 

Kindergarten  幼稚園

多くの幼稚園は、公立学校や特定宗教関連学校のシステムの一環として、無償で提供されています。私立でも幼稚園がある学校があり、その場合は、有料になりま す。Ontarioなど4歳児の幼稚園がある州もありますが、殆どの州では、平日週5日、または週5日未満の5歳児の幼児教育プログラムを提供していま す。幼稚園は「子ども達への教育」を目的としていますが、中には、働く親に配慮したスケジュールで 運営しているところもあります。

 

 

Regulated Family Child Care (Home Child Care)  正規ファミリー保育(個人保育)

「Caregiver(介護士)」の自宅で複数の子ども達をケアする保育スタイルで、全ての州で行われています。中には、2人のCaregiverによる少し規模の大きい「Group Family Child Care」もあります。通常は「保育環境・年齢別による子どもの人数・活動内容の記録義務・食事内容・安全衛生管理・専門トレーニング」などの規定があります。州によって、政府関係者や第三者機関である専門エージェンシーが定期調査に入り、不備はないか監視されますが、多くのファミリー保育は、特に規制がなく、一度認可されると監視されることないようです。

 

 

Unregulated Family Child Care (Home Child Care)  非正規ファミリー保育(個人保育)

「Caregiverの家で子どもをケアする保育」と「Caregiverが子どもの家でケアする保育(ナニー・ベビーシッターと呼称)の2種類があります。待機児童問題から多くのカナダ人が利用していると想われますが、非認可のため、具体的な利用数はわかっていません。州の規定に沿う必要はないものの、どこの州でも保育可能な子どもの人数制限は法律で規制されているので、守らなければいけません。Caregiverになるには特別な資格は要らず、誰からもチェックされることもありません。特別なトレーニングを受ける義務も、保育施設のサイズなどの条件も要求されていません。


カナダの保育の現状を知る便利なサイト

 ●カナダの州ごとの保育規定&ガイドライン比較

  ⇒ Compare provincial regulations & guidelines - CBC.ca