【BC州バンクーバー周辺情報  Metro Vancouver Info

 

  教育環境/学級の種類        
  
School Settings      

BC州のMinistry of Education(教育省)は、「障害児のインクルージョン」を次のように定義しています。

 

The principle that all students are entitled to equitable access to learning, achievement and the pursuit of excellence in all aspects of their education. The practice of inclusion is not necessarily synonymous with integration and goes beyond placement to include meaningful participation and the promotion of interaction with others.

 

 

BC州ではさまざまな種類の教育環境があります。

「学区域の視点や地域のサイズ・地域で利用可能な支援・親が望む環境があるか…」などにより、選択が変わってきます。

 

子どもに最適な教育環境の選択をするには、親は、学校初日までのかなり早い段階で、学区のスタッフと話し合いを持つ機会を設け、同意をもらうことです。カナダの裁判所では、この事前のミーティングを子どもにとって重要なことだと協調をしています。 Emily Eatonという生徒のケースでは、親はEmilyを地元の学校に通わせたかったのにもかかわらず、学区の教育委員会がEmilyにとって最適だと決定したのは、「特別支援学校への入学」であったと、カナダ最高裁判所が判決を出しました。 インクルージョンは、障害児の親にとって「哲学的な原則」のようになっていますが、学校に関する法律「School Act」の元では、義務にはなっていないのです。それでも、どんな子どもであっても、まずは、普通学級への配置への可能性が第一の選択として考慮されますが、最終的な配置は、親と子どものサポートチーム、学区のスタッフとの話し合いで決定されます。

 

下記は、障害がある子どもに提供されているBC州の教育環境のタイプです。

 

■Resource Room(特別支援学級)

日本でもお馴染みの「障害を持つ子ども専用のクラス」です。学校や地域のポリシーや活動によって異なってきますが、様々なプログラムが提供されています。子どもによって、フルで特別支援学級に通うスタイルもあれば、普通学級にもできる範囲で部分的に参加する“integrated”スタイルあります。

 

 

Specialized Classroom(専門学級)

全ての学校に設置されているわけではありませんが、特別なタイプの生徒に対応したクラス。例えば、ライフスキルや振舞い、社会性の発達を学ぶクラスなどです。同じような問題を抱えた子どもたちが一緒に学びます。

 

 

Distributed Learning(分散学習)

自宅にいても、学校や他の施設にいても、講師から学ぶことができる遠隔教育“Distributed Learning” は、BC州の地方の生徒だけなく、都心の生徒にも、通常の教室外での学習へのアクセスしやすく、選択肢や柔軟性を与えてくれます。公立・私立の学校の基準に合わせたカリキュラムで、親が手伝い、資格のある教師がプログラムの配信・監督を行います。

 

 

Segregated School(分離学校)

日本の特別支援学校のこと。BC州の殆どの学校は、障害を持つ子どもであっても、できる限り通常学級で学ぶ「インクルージョンが」が主流ですが、障害(特に、発達障害)を持つ子どものみが通う学校がある地域もあります。

 

 

Independent/private School(私立学校)

非営利団体や民間の専門業者が作る10人以上の生徒用プログラムを提供。私立学校は、教育省からの助成金と親から徴収した授業料などで運営されています。

 

 

Homeschooling(ホームスクーリング)

居住区の学校や、フランス語の学校、私立学校に予め登録をします。親は、監督するだけでなく、プログラムのすべての責任を負うことになります。他の教育環境と異なり、州の学校基準を満たす必要はなく、政府専門家にチェックされることもないので、子ども一人一人に合わせた内容を取り入れることが可能です。

 

 

【関連資料】

 ・ACT’s Autism Manual for B.C.

  (Chapter 7--The B.C. Education System – An Introduction for Parents of Students with ASD

 

「学校関係」よくある質問

Q1 お勧めの公立または私立小学校はありますか?

 

 非常に難しく、一概に「この学校!」とは簡単には言いにくいです。日本は「ある程度統一された学校のカラー」というのがあるのかもしれませんが、こちらでは、学校の良し悪しは、「誰が担任になるのか」によって異なってくるからです。校長先生によって、学校のシステムが異なったりすることはありますが、やはり個人主義の社会なので、現場で指導をしている担任の質、人格が第一に生徒の学校生活に影響を与えている感じです。しかし、自閉症児を持つ親御さんや障害者福祉関係のスタッフによると、「リッチモンド」や「スティーブストン」は、比較的自閉症児に対してシステムも教育も整っていると言われています。BC州を代表する初の「自閉症センター」が設立されたのもこのリッチモンドです。(※リッチモンド市の人口8割は中国人からの移民です)

 

 

 

Q2 事前に日本で用意しておくべき書類(日本からの移住の場合)

 

 「学校の手続き」のページの「公立学校の必要書類」の欄をご覧ください。日本の医師からの診断書は、いくら北米基準の診断方法で記載した診断書で、有資格者の英訳をしたとしても、無効になる確率が高いです。こちらの政府は、あくまでもBC州の専門家によるアセスメントを第一に考慮する傾向にあります。管理人の私の場合は、息子の日本での診断書を持参したのですが、「あら、そう」くらいにしか見てくれませんでした。(涙)

 

 

 

Q3 日本語の療育サポートはありますか?

 

 「日本語ができる補助教員」は、リクエストはしてみてもいいですが、受け入れられない可能性の方が高いです。そもそも「日本語ができる補助教員」がとても少なく、いたとしても、もうすでに担当している子どもがいて手がいっぱいという理由があるからです。また、一人のリクエストを聞いてしまったら、全ての親御さんのリクエストも聞かなければいけなくなってしまうので…というのも理由にあるそうです。英語を母国語としない子ども達(健常児)のESL教育も、政府の予算カットで、かなりクラスが少なくなっているのが現状ですので、結果は厳しいかもしれませんが、こちらではガンガン声を上げないと何もしてくれません。「気を使ってくれる。配慮してくれる。」なんてことは皆無ですので、ダメモトでリクエストをした方がいいと思います。

 

あるいは、「親御さんがご自分で日本人のBehavioral Interventionist(ABA(Applied Behavior Analysis =応用行動分析)に則って、療育する専門家)を雇って、通訳、兼補助員として学校生活のサポートをしてもらう」のも、学校によっては認めてくれるかもしれません。

 

 

 

Q4 公立学校の場合、学区はどの程度細かく分けられているのでしょうか?

       絶対に学区外の学校には通学できないなどの厳しいルールがありますか?

 

⇒ 基本的には、「どこでもどうぞ」というのではなく、日本と同様「住んでる住所次第で行く学校が半強制的に決められてしまう」感じです。学区内の学校が自動的に一番の候補に上がりますが、もうすでに定員が埋まって空きがない場合や、学区内の学校にそのお子さんの障害レベルに適したプログラムがない場合などの理由から、他の学校を紹介されることもあります。そういったケースでも、できる限り居住地域に近いところから選択されます。

 

●バンクーバーの場合

 ---公立学区地域情報

 ---公立学校情報ストリートの名前を入力すると、自動的に最寄りの学校が得られるページ)

 

●リッチモンドの場合

 ---公立学区地域情報

 ---公立学校情報ストリートの名前を入力すると、自動的に最寄りの学校が得られるページ)

   ※上記の「公立学区地域情報」ページの地図をクリックすると出てきます

 

●他の地域の検索

 ---検索サイトで、(小学校の場合)「elementary school catchment」や

  「elementary school boundaries」といったキーワードの後に、地域を入力し、学区情報を検索。

 

 

 

Q5 BC州の公立学校における生徒(障害認定を受けた生徒を含む)と保護者の法的な権利は

       どんな感じになっているのでしょうか?

 

 下記のParent-and-Student-Rights-in-the-BC-School-System [PDF]」をご覧ください。

Parent-and-Student-Rights-in-the-BC-School-System-
Parent-and-Student-Rights-in-the-BC-Scho
PDFファイル 144.0 KB

Q6 重度障害児の「就学猶予」や「免除」はあるのでしょうか?

 

 勿論、治療や生命・健康の維持のために療養をしなければならないほどの病弱であったり、発育不完全であったりして、やむを得ない事由のため就学困難と認められる場合は「猶予」ということもありえますが、「重度の障害(身体でも、知的でも)があるため、みんなと一緒にやっていけるのかが不安だから」という理由だけでは、猶予や免除にはなりません。

 

なぜなら、カナダの学校では、同じ教室にいても、みんな同じことをしているとは限らないので、「絶対にみんなと一緒にやっていかなければならない」という感覚が、日本の学校ほどはないからです。 たとえ重度の障害がある生徒がいても、Educational Assistant (アシスタントティーチャー)と呼ばれる専門のトレーニングを受けた支援員がサポートをして、「その子供ができる範囲のこと」をします。

 

例えば、小学校高学年の算数クラスで、他の殆どの生徒は「分数の計算」を勉強しているとしましょう。障害が比較的「軽度」の場合は、「分数の計算」を絵を描いて説明したり、計算機を用いたりすれば理解ができるかもしれません。しかし、 重度障害がある生徒の場合は、どんな方法で説明したとしても、「分数」自体をどうしても理解できない、足し算引き算程度も分かってない、あるいは、そもそも数字も分かってないということもあります。その場合は、同じ教室にいても、その重度障害児だけ「足し算引き算」や「数字」を教えてもらっているなんてこともあります。算数が苦手でそれも難しい場合は、まったく違うことをやること(パズルなど)もあります。また、算数は一緒にやることが難しくても、音楽や体育など出来る科目は一緒にやるなど、工夫をしながら、一緒に学ぶ場を模索していく感じです。

 

なんらかの理由で通学することが難しい場合は、カナダではホームスクールが認められているので、自宅で「その子供ができる範囲のこと」をします。 このように、日本の学校のように、「絶対に通学して、みんなと一緒に同じ内容の勉強を、同じペースでしなければならない」という教育環境ではなく、その生徒に合わせた方法や内容で授業を受けられ、柔軟に対応してくれるため、「就学猶予や免除」という感覚があまりないのです。

Q7 障害のある子どもの中高卒業後の進路は?高校大学入学制度はどうなっているのでしょうか?

 

 こちらのサイト「高校~成人後の生活」のページの「【チェック3】 どのように「昼間の時間」を過ごして行くか?」をご覧ください。

 

比較的軽度の障害の場合は「進学・就労」、進学も就労もできない重度の場合は「専門機関のデープログラム・ライフスキルプログラム」というのが主な卒業後の進路です。

 

「高校大学入学制度」についてですが。。まず、カナダの公立は(障害の有無関係なく)高校まであるので、私立に行かせない限りは「受験」はありません。大学についても、日本の大学受験のように「中学や高校入学当初から塾に通って、机にかじりついて毎日毎日勉強をし、とても厳しい試験を何度も乗り越えて~」といった感じではなく、「比較的入学しやすいが、卒業するのが大変」というのが一般的です。(ただし、勿論、「誰でも入学できる」のではなく、入学条件を満たすことは必要で、人気のある大学や学部の場合、競争率は高くなります。)

 

※日本では高校終了時に貰える証明書は「卒業証明書だけ」ですが、カナダBC州には2種類あり、一つは「Dogwood」と呼ばれる日本と同様の通常の卒業証明書。もう一つは「Evergreen」と呼ばれる卒業ではなく、個人の目標を達成した証明書で、障害が比較的重度で、通常のカリキュラムではなく、個別に合わせたカリキュラムを終えた生徒に授与される「修了証」のことです。

 

コアな入学条件は「高校の卒業(または終了)」と「英語力」ですが、希望する大学によって、学部によって、異なります。例えば、BC州の中でもレベルが高い「UBC(University of British Columbia)」では、高校卒業が条件の一つになっているので、「Dogwood」のみですが、「Douglas College」では、必ずしも「Dogwood」とは限らず、「Evergreen」であってもその内容によって、そして、他の条件を満たしていれば入学申し込みは可能です。英語力は、「English 12・TOEFL・IELTS・EIKEN Practical English・CAEL・Cambridge English CAE・Canadian Language Benchmark (CLB)」などの認められた英語のテストで、入学条件をクリアする点数を取得しなければなりません。

 

学部によっては、「履歴書・論文・ポートフォリオ・推薦状」の提出を求められたり、「少なくとも○○時間の就労経験(またはボランティア活動)」が必要だったり、オーディションがあることもあります。 障害があるために通常授業を受けるのに支障がある場合、「試験の追加時間・授業の音声録音・テキスト読み上げソフト・高さ調節可能な机・手話通訳・ガイド/介助犬」などのサポートがあります。