【離婚 / Divorces

 

  慰謝料 / 配偶者扶養義務 / 親権 / 監護権 / 面接権 / 養育費   
  
Compensation / Obligations for spouse / Custody / Guardian    
  
Access / Child Support Money

 

 

 

 

 

慰謝料

「こどもを抱えて離婚するんだったら、浮気旦那からガッポリ慰謝料 ふんだくってやんなよ~~」こんな台詞が日本人同士ではよく交わされます。日本では、離婚原因を作った方がその精神的苦痛(暴力、精神的虐待、不貞行為など)に対して支払う「慰謝料」という損害賠償金制度があります。

 

 

配偶者扶養義務

慰謝料や財産分与などの合意が得られ、正式に離婚が完了したあとは、配偶者に対する扶養義務が無くなります。しかし、こどもがいる場合は、勿論、扶養義務があるので、こどもを養育している親にもう一方の親が「養育費」を支払います。

 

 

親権

法律的に「身上監護権」と「財産管理権」とに分類され、具体的には、子供が一人前になるように、身の回りの世話、教育、躾や身分行為の代理人になる「身上監護権」と、子供に代わって子供名義の財産の管理や、財産に関する法律行為を行う「財産管理権」となります。

 

日本では、離婚後も父母が共に子供の共同親権となることはできず、どちらかの親を親権者と決めなければ離婚は成立しません。まだ子供が乳幼児の場合には、母親と一緒に生活する方が、保育上、自然であると考えられ、80% 以上は母親が親権者・監護者になっています。子供がある程度の年齢に達した場合は、子供の意思が尊重され、子供が15歳以上の場合は、子供の意見を聞く必 要がありますが、子供に親権者の決定権があるわけではありません。子供が20歳を過ぎたら、親権者を指定する必要はありません。

 

「結婚は、本人同士のものというよりは、家同士のもの」という考えが古くからあるからか、夫婦にこどもがいたとしても、「離婚=夫婦の永遠の別れ。親権を持た ない親は、こどもに二度と会えない。」状況になってしまうのも少なくありません。現代では徐々に変化しているようですが、西洋に比べれば、まだこのような 思考が残っています。

 

 

監護権

一般的には子 供を引き取り育てる側が親権者と監護者を兼ねていますが、親権の「身上監護権」の部分を切り離して、親権者とは別に監護者を定めることもできます。例え ば、父親が親権にこだわり、親権者になれないと離婚はしないと主張し、話がまとまらなかったり、父親を親権者と定めたとしても、現実は父親には仕事や出張 もあり、日常の子供の監護教育が出来ないケースもあります。このような場合、父母の話し合いで父親が親権者として子供の法定代理人・財産管理などの行為を 行い、母親が監護者となって子供を引き取り、子供の身の回りの世話や教育を行う事ができます。

 

 

面接権

親権者や監護者とならなかった方の親に認められた権利で、離婚後に子供と面会したり、電話や手紙などの方法で連絡をとるなど、子供の養育に支障をきたさない範囲内で、 子供と接する機会を保証しています。面接交渉権は、親権者や監護者とは異なり法律に規定された権利ではありませんが、裁判を通して認められてきた権利であ り、現在では、親として有する権利として認められています。

 

親権を失った親は、親としての権利がなくなり、法的には親ではなくなってしまうので、その結果、親権のある親の拒否によって、離婚後に子どもと会えなくなる 事例が多発しています。離婚後だけではなく、別居中にも、子どもを連れ去った親によって子どもと会うことができなくなることもあります。調停や裁判で面接 権に正式に取り決めがあったとしても、親の争いにこどもを巻き込みたくないという思いから、こどもに会えなくても諦め、我慢してしまうこともあるようです。

 

 

養育費

子供が自立できるまでに必要な費用などを 子供を養育しない他方の親が支払う費用。

 

法的に結婚をしているか否かに関わらず請求する事ができ、また父親が子供を養育し、父親より母親の方が収入が多い場合、母親に請求することもできます。裁判所を通さなくても、請求することが可能で、その額は、親の資力・生活水準等を考慮して決められます(計算方法)が、平均額は、子供一人につき月額24万円。

 

一度取決めた養育費の金額や期間を、父母・子供の事情や社会情勢によって、離婚後に変更することは可能です。養育費を受け取っている側は、「子供の進学に伴う学費/病気や事故による医療費/子供を引き取り育てる親が病気や事故、または失業による収入の低下/インフレによる物価水準の上昇」などの理由は、増額請求の対象になり、支払っている側は、「リストラにより失業/病気や事故により長期入院/再婚し、新たに子供が生まれた/子 供を引き取り育てる側が再婚し、再婚相手と子供が養子縁組した場合」などの理由は、減額請求の対象になります。基本的には、双方の話し合いによる協議にて 取り決めますが、協議が調わない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。子供を引き取り育てる側が再婚し、子供が再婚相手によって十分な養 育を受けられていたり、収入が安定していても、上記の通り、減額の請求が認められる可能性があるだけで、養育費の支払い義務が解かれたわけではありませ ん。

 

養育費の支給期間は法律で決められている訳ではなく、当事者との話し合いによって決められますが、合意に達しない場合は、家庭裁判所に判断をゆだねます。基本的に、日本国憲法で定めている成人とみなされる年齢20歳 まで養育費を支払う例が多いですが、例えば、16歳の娘が結婚した場合、高校卒業して18歳で働き始めた場合は、成人したとみなされるので、養育費の支払 い義務はなくなります。逆に、こどもが先天的や後天的な障害を負っていて、自立の見込みが期待できない場合は、支払い義務が20歳以降も続きます。

 

しかしながら、現状では養育費を支払う義務を持っている元パートナーの半数以上が、支払いを途中でやめてしまっています。こどもとの面接交渉が円滑に行われ ている場合には、養育費は高い率で支払われているようですが、面接が定期的に出来ない場合は、当然、こどもに対する情というものが薄れ、支払う意欲が低 下。やがては、お金がもったいなく感じられ、徐々に支払いを怠り、後には音信がフェードアウトしてしまうのです。協議離婚で、養育費の支払い約束をただの書面や口約束のみでしかしていない場合、相手に支払いをさせるのは困難です。支払いを再開してもすぐにまた未払い状態に戻ってしまうことがほとんどです。

 

離婚する際に、慰謝料、養育費、面接交渉権などを詳細に記載した「強制執行認諾付離婚協議公正証書」を作成しておけば、支払いが滞ってしまった場合、調停や裁判で強力な証拠になり、強制執行で給与等の差し押さえが可能になります。

 

未払いの養育費は、口約束など具体的な取決めなかった場合、養育費支払い義務の時効はないので、過去にさかのぼって請求できますが、あまりにも時間が経ちす ぎてしまうと、取立てが難しくなります。調停委員や裁判官がこどもの年齢や双方の経済状況などの具体的状況に即して判断するのですが、請求が通る可能性が 低くなってしまうかもしれませんので、1度でも滞ったら、すぐに対処する必要があります。

 

書面などで具体的な取決めがあった場合、支払いの義務、請求には時効があります。「養育費債権」として扱われ、最初の弁済期(借金返さないといけない日=この場合は、養育費の支払い期日)から20年間、または最後の弁済期から10年間行使しないときは時効消滅することになります(民法168)。この具体的な養育費債権から生じる月々の養育費支払請求権も5年間行使しないことによって時効消滅することになります(民法169)。一方、家庭裁判所により審判ないし調停において養育費が具体化した場合には、10年の消滅時効に服すことになります(同1742)。

 

 

 

 

 

 

 

 

慰謝料

カナダの離婚の法律では、どちらに落ち度があっても、慰謝料というものは存在しません。カナダの場合、「離婚は、お互いに納得して決めること。配偶者の酒乱もギャンブル癖も浮気も『両者の問題』。両者が協力し合って解決すること。解決不能であれば両者が納得した上で別れること。」という発想がベース にあるので、「どちらが悪い」ということはないようです。離婚して配偶者が浮気相手の元に去っていくような場合でも、残された妻(夫)は、浮気夫(妻)に対して財産の半分を分与しなければなりません。このよう な現状があるので、最近の男性は(または、資産のある女性)は、コミットメントするのを避け、だらだらとけじめをつけない交際を続ける傾向にあるようです。

 

 

配偶者扶養義務

日本人とカナダ人の国際結婚の場合、原則的に婚姻時カナダ人配偶者は、10年間、スポンサーとして日本人の配偶者の経済的な保証をする事をカナダ政府に宣誓、契約します。日本人の配偶者がカナダの生活保護等を受けた場合は代りに返済義務を負う事になります。この契約は例え婚姻関係が解消され、子どもがいない場合でも継続します。

 

 

親権

子どもと同居し、身の回りの世話をする権利のことを言います。カナダでは、「Joint Custody」つまり、両方の親が離婚と同時に親権を持つことが認められています。

 

 

監護権

教育や医療、 宗教、子ども名義の所有財産管理など。。。子どもを取り巻くさまざまな決定を持つ権利です。親権も監護権も法的な決め事であり、親権や監護権を持たない親で も子供の扶養義務はあり、子どもをどのように育て教育するか意見を言う権利もあります。また子どもを引き取り育てる側へ対して、「面接交渉権(下記)」も要求できます。

 

 

面接権

片親が離婚に際して親権を失う国は、先進国の中では日本だけで、日本以外の先進諸国では、子どもには双方の親から養育される権利があるという共同親権(Joint Custody) が一般的で、子どもの権利条約にも規定されている通り、双方の親には、離婚後も子どもを養育する権利と義務があり、子どもも親に養育される権利を保障されています。別居や離婚によって愛する親から引き離されることは、激しい怒りや抑うつ、集中力の欠如に起因する学習遅滞、暴力や非行等の問題行動、 自責感情など、さまざまな問題を引き起こし、海外では虐待であると考えられているのです。離婚後の子ども達は、一週間の内、「平日は母親と過ごし、週末・長期の休みは父親と過ごす」といったように、両親間をいったり来たりして暮らしている場合が多いです。

 

 

養育費

子どもが両親から得られる経済的なサポート。両親が法的に結婚をしているか否か、同居しているか否かに関わらず請求できる権利です。法的には子ども が19歳までとなっていますが、病気や障害があったり、学校に行ったりしていて自立が困難なケースは、養育費の支払い義務は継続します。

 

養育費の金額は、夫婦が法的に結婚している場合は連邦政府養育費ガイドライン(Federal Child Support Guidelines)を、法的に結婚していない(コモンロー関係)か、結婚していて現在別居中の場合は州の養育費制度(Provincial and Territorial Family Laws)を基本に、支払う側の親の経済状況を考慮し、双方の話し合いによって取り決めます。

 

BC州の養育費の目安は、こちらを参照。 面接の頻度が養育費の支払い額に影響することもあり、子どもを獲得するための親権争いの醜さを伝える話は、後を絶ちません。話し合いで解決できない場合は、調停か裁判で取り決めます。

 

 

養育費の支払い内容が確定したら、FMEP (Family Maintenance Enforcement Program) に登録を。これは、養育費の計算、受領の記録、受取る側への養育費の転送などを担ってくれるBC州の機関ですが、カナダの他の地域にもあります。日本には ありません。支払いが滞った場合、受領者に代わって、下記のいずれかの方法で支払い者に対して強制的に払わせるなどの法的な執行もしてくれます。かなり厳しいみたいです。

 

・給料や銀行口座などの債務差押通知の発行

・失業保険(EI benefits)や所得税返金(Income tax returns)の横取り

・不動産の抵当権などの土地登記差押さえ

・個人所有物に対する維持担保の差押さえ

・クレジット会社への通達

・運転免許書の差押さえ

・政府が発行したライセンスやパスポートの取消し

 

FMEPは、 支払い義務者が突然行方不明になってしまった場合でも、持ち合わせている(勤務地・親戚の名前・SINナンバーなど)情報から受取者に代わって行方の追跡を試みてくれます。支払う側・受取る側、どちらかの親がBC州以外の州や外国に居住している場合であっても、BC州と協議提携があるカナダの全州・アメリ カ・諸外国では、FMEPを通して養育費請求が可能です。提携がないところに居住していても、カナダで収入や財産があったり、カナダのパスポートを保持しているのであれば、FMEPによる強制施行が可能です。

 

 ※ただ、相手がコロコロ転居や転職を繰り返したり、働く気がなくていつまでも低所得であったりした場  合は、FMEPの制度はあれど、非常に養育費を徴収するのは困難になります。

 

FMEPに関して注意があります。離婚する際の離婚同意書(Separation Agreement) には、養育費やその他の費用について「金額」をはっきり具体的に「○○ドル」と明記することです。金額を明記していない場合、FMEPは援助できなくなってしまう可能性があります。この知識がない弁護士もいるので、同意書にサインする前にご自 分で確認が必要です。養育費は、本来「お互いの収入によって毎年変わる」ものではありません。毎年見直すことができれば苦労はしないのです。きちんと話してSeparation Agreementには金額を明記してもらってください。